コンピュータを利用するために、わざわざキーボードの打ち方を習わなくても、使い慣れたスマートフォンのフリック入力によって文字入力が行えるデバイスが登場。小型軽量でドライバソフトも要らないため、手軽に持ち運んで出先でも活用することができる。
普及したフリック入力
かつてiPhoneが発売されてしばらくの間は、タッチ式のソフトキーボードなど効率が悪くて普及するはずがないといわれていたことがあった。しかし、今やフリック入力は市民権を得て、特にデジタルネイティブ世代には半ば常識化し、ハードウェアキーボード並みのスピードで文字入力ができる人も珍しくない。
反対に、これまで一般的だったコンピュータのキーボードが苦手という人も増え、スマートフォンは使いこなせてもMacやPCでは仕事の効率が落ちるという新入社員も現れ始めている。
それならば、いっそスマートフォンのフリック入力でコンピュータを使えるようにしてはどうかという逆転の発想から、インター・ラボ株式会社が開発した製品が、「フリックタイパーBT(FlickTyper BT)」だ。
もともと同社は、USBケーブルによる有線接続によって、アンドロイドデバイスからMacとウィンドウズマシンに対してフリック入力ができる「フリックタイパー(FlickTyper)」という製品を製造・販売していた。しかし、iPhone対応と無線接続を望む声が高まり、より小型でブルートゥース接続としたフリックタイパーBTの開発につながった。
特殊なドライバなどは不要で、USBポートに差し込むだけ(ハブ利用時にはバスパワーのみでは不十分な場合もある)で利用でき、Mac側の設定も、ANSIキーボードとして認識させて「Unicode 16進数入力」を追加すればOKなので、ほんの数分もあれば利用可能となる。あとは、iPhone側の専用アプリを使って、普通にフリック入力をするだけでよく、新たなキーボード配列などを覚える必要はない。
FlickTyper BTの本体は、USBメモリのような外観とサイズで、気軽に携帯できる。電源供給もUSBポートから行われ、別電源は不要だ。ただし、USB Type-Cポートしか持たない機種への接続には、変換アダプタや対応するハブが必要となる。
Bluetooth接続されたFlickTyper BTは、ドライバなしで機能する。Mac側の設定として、日本語環境設定でANSIキーボードを選択し、入力ソースに「Unicode 16進数入力」を追加すれば準備完了。あとは普通にフリック入力可能となる。
カスタマイズにも対応
フリックタイパーBTは、任意のキーボードショートカットを登録してワンタップで使えるようにするショートカットボタン機能も備えている。
これもiPhoneからの操作を最大限に活かすための工夫であり、よく使われるショートカットはプリセットされているが、ユーザが自分好みの機能を登録してボタンを並べ替えていくと、より使いやすい環境を構築することができる。
筆者の場合には、「アプリ切替」(=[コマンド]キー+[タブ]キー)や「保存」(=[コマンド]キー+[S]キー)を登録したところ、さらに快適に利用できるようになった。
また、当然ながらiPhone側の音声認識機能を使ったテキスト入力にも対応しているので、口述筆記のように文章を作成していくことも可能だ。もちろん、macOSにも音声認識入力機能はあるものの、使い方はiOSのほうが簡単なので、iPhone側で認識を行うメリットを十分感じることができる。
ちなみに、実はこの原稿もすべてフリックタイパーBTを使い、iPhone Xからフリック入力で書いてみた。さすがに筆者は普通のキーボードにも慣れているため、Macで直接書くほうが速い面はあるものの、それでも予測変換の恩恵を受けながら、十分実用的なスピードで入力していくことができた。
たとえば、怪我などで片手しか使えなくてても、ほぼ通常どおりにMacで文書作成ができたり、人によっては寝ころがった状態でMacを使いたいというときに、iPhoneをマウス代わりにしてコントロールするなど、ベテランMacユーザにとっても、この製品が活躍できるシーンは色々とありそうだ。
このフリックタイパーBTは、iPhoneに始まり現在に続くスマートフォンの潮流が、さまざまな常識を覆しつつあることを身近に感じさせてくれる製品といえるだろう。
入力時には、iPhone側の予測変換も利用できるので、思った以上に快適な入力が行える。また、キーボードショートカットも1タップで使え、プリセットされたもの以外に好みのショートカットの登録や、ボタンの並べ替えも可能だ。