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中高生に大人気の勉強ノートまとめアプリ「Clear」

著者: 山田井ユウキ

中高生に大人気の勉強ノートまとめアプリ「Clear」

試験前、勉強のできる友だちにノートを借りた経験のある人は多いだろう。上手にまとめられたノートは、教科書以上に学習をサポートしてくれる。そうした“ノート交換”をiPhoneを使って行うアプリが学生の間で静かなブームになっている。アルクテラスが開発した「クリア(Clear)」だ。

代表取締役社長の新井豪一郎氏はNTT、コンサルティングファームを経て星野リゾートに入社。スキーリゾート事業の責任者を務めたあと、2010年に同社を創業したというユニークな経歴の持ち主だ。星野リゾート入社前から、テクノロジーと教育サービスの可能性に注目していたという。

創業して最初に始めたのは、生徒一人一人の個性を活かした教え方を実践するための学習塾向け指導ツール「カイズ」。これに手応えを感じた新井氏は、次にスマートフォンを使って直接的に子どもたちの学習を支援できるサービスを展開することにした。きっかけは、電車内で偶然耳にした会話だったという。

「女子高生がかわいく作ったノートを友だちに自慢していたんです。それを見て、これだ!と思いました」

ちょうど社内でも類似のアイデアが出ていたこともあり、「ノート共有」というコンセプトが固まった。β版を2013年12月に公開し、翌年4月に正式版をローンチ。現在までにダウンロード数は140万を突破している。

Clear

【開発】アルクテラス株式会社

【価格】無料

【場所】App Store>教育

【URL】https://www.clearnotebooks.com

ユーザ同士でノートを共有するためのプラットフォーム。iPhone/iPadアプリ、WEBブラウザ上で利用できる。[教科]や[単元]などから公開されているノートを探せるほか、自分のノートを公開することも可能。コメントや「いいね!」ができるなど、SNSとしての側面も持つ。「いいね!」された回数が多いノート作者のランキングもあり、上位者は憧れの存在。著名ユーザのノートをまとめた書籍も発売されている。

クリアと名づけられたアプリの特徴は、ポップでカラフルなデザインと、ノート共有を促すさまざまな仕掛けにある。たとえばノートを「いいね!」したり、作者をフォローしたりできる機能。「いいね!」をもらいたい、フォロワーを増やしたいという欲求が、ノートの公開をあと押しする。ノートの表紙はサムネイルとして表示されるため、そこに凝る学生も多い。クリアにおいて、ノートは勉強用のツールを超え、1つの“作品”になっているのだ。

ランキングには「いいね!」された回数が多いユーザの名前が並ぶ。上位入賞者は全ユーザの憧れの的だ。「神ノート職人」と呼ばれるみいこさんのノートは、そのクオリティの高さから書籍化もされた。ユーザ会を開くと彼女のサインを求めるファンが列をなすなど、今やスター的存在だ。

多くの学生に支持されるクリアだが、気になるのはマネタイズをどうしているかということ。新井氏によると、BtoB、BtoCの両面で進めているという。

「企業向けにはクローズドな学習プラットフォームとして提供しており、オンライン学習やeラーニングなどにご利用いただいています。BtoCでは、人気ユーザを“認定ノート作家”として有料ノートを出しています。購入いただくとノート作家さんにもお金が入る仕組みです」

さらに今後は、提携しているZ会のコンテンツを有料で公開するなどの取り組みを進めていくとのことだ。

新井氏が見ているのは日本市場だけではない。早い時期からグローバル展開も進めており、現在はタイ、台湾、韓国、中国、インドネシアでもクリアのサービスを展開している。特にタイは学生のSNS滞在時間が長く、助け合うことをよしとする文化がノート共有というコンセプトにマッチ。ユーザ数も順調に伸びているそうだ。「ノートのとりかたにもお国柄が出て面白いですよ」と新井氏は笑う。次の目標はヨーロッパと南米。さらに人口の多いインドにも注目している。

機能面では動画投稿や、AIとOCRによる検索の強化を進めている。目指すは「勉強ノートのクックパッド」という新井氏。達成度を聞くと「まだまだ1%くらい。これからさらに良いサービスに育てていく」と気合い十分の答えが返ってきた。

ノートの一覧ページには色とりどりのサムネイルが並ぶ

公開されているノートは15万冊、150万ページにも及ぶ。ずらりと並んだサムネイルは閲覧してもらえるかどうかの重要なポイント。イラストをつけたりカラフルにして目立たせたりと、学生たちの「見てもらうための工夫」が見てとれる。

わかりやすく分類されたノートたち中には教科書単位で閲覧できる教科も

ノートは学年や教科、その時期特有の企画モノといったカテゴリで分類される。教科によっては、教科書の出版社別でノートを探すことも可能。公開されたノートを見ると、そのタイトルの付け方にも工夫や法則、流行などがあるようだ。たとえば【(カテゴリ名)】などとカテゴリ名を頭につけてひと目で何のノートかわかるようにしたり、「文章問題に必ず役立つ!」とアピールしたりといった具合だ。

フォロー、タイムライン、ランキングなどSNSとしての機能も兼ね備える

ノート作者をフォローすると、新しいノートが公開されたときに通知がくる。自分が公開したノートが「いいね!」されたり、コメントがついたりしたときも同様だ。通知はタイムラインという形で表示。このあたりの仕様はSNSに近い。多くのフォロワーを抱える人気の作者もいる。「いいね数!」による著者ランキングも発表されており、上位者は皆の憧れの存在だ。

トリミングや暗記シールなど多彩な編集機能も用意されている

自分のノートをアップすることで、自学にも役立つ。アプリ内のカメラモードには便利な「自動トリミング機能」があり、見やすいノートの写真を簡単に作り出せる。また、付箋のように画面に貼れる「暗記シール」を使えば、ノートを使った暗記テストも行える。

個性あふれるノートは見ているだけでも楽しい

シンプルにまとめたり、詰め込んで賑やかにしてみたり、蛍光ペンや色ペンを駆使して見やすくしてみたり…。ノートは個性にあふれていて、眺めているだけでも楽しい。中には教科書や参考書顔負けのわかりやすいノートもあり、人気を集めている。まれに悪意なく参考書をそのままアップしてしまうユーザもいるそうだが、もちろんそれは禁止事項ですぐに取り下げられる。

海外展開も進めるクリア公開ノートには各国の個性が見える

ノートのとりかたの傾向にも、国によって違いがあるらしい。ノート文化が進んでいるタイでは、カラフルな色ペンを使ってびっしりと書き込まれたノートが多い。文化の違いはあれど、どの国でも「学習にはノートが大切」ということは変わらないようだ。

アルクテラス株式会社

代表取締役社長:新井豪一郎氏