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【WWDC2017】iMac Pro

【WWDC2017】iMac Pro

【発売】アップルジャパン

【価格】4999米ドル(日本での予定価格は未発表)

【発売日】12月発売予定

同梱物

現時点で公開されている情報では同梱物は電源ケーブル、Magic Keyboard(テンキー付き)とMagic Mouse 2、Lightning to USBケーブル。キーボードとマウスのカラーはスペースグレイになる。

想像の彼方へ

Macプロは今年中のアップデートは間に合わず、2018年を目処に新モデルを発表する。その代わりiMacにハイエンドプロ向けの製品ラインアップを追加し、年末までに提供する予定だ│このアナウンスを海外メディアが報じたのが4月。そのわずか2カ月後のWWDCでここまで詳細な形で発表されるとは、誰が予想できただろうか。

iMacプロのスペックは最低でも現行のMacプロ、しかも上位モデルに匹敵するスペックから提供される予定だ。フルカスタマイズ仕様になれば、もはやウィンドウズを含むコンシューマベースでは比較できるモデルがなく、比較対象はプロゲーミングかワークステーションといった専門分野でないと競合製品がいないレベルである。

また、iMacプロは過去の世代比較して67%も大きい500Wの電力を必要としているため、筐体内部の冷却機構はエアフローで75%、熱容量で80%増えるように廃熱を再設計している。つまり、これはPower Mac G5やMacプロ(現行モデル)に匹敵するレベルでのプロ向けエンジニアリングの大改修であり、それだけアップルが熟考を重ねたうえで仕上げた製品だと言える。半年後にはなるものの、そのパフォーマンスは「過去最高」を謳うに相応しい振る舞いが期待できるはずだ。

 

[Features]プロ向けであることを念頭に置いたワークステーション仕様に

選択に手加減なし

現時点で公開されている情報を元にiMacプロの特徴をチェックしてみよう。まず外観だが、デザインは基本的に現行のiMacを踏襲しており、高さ、幅、スタンドの奥行きはまったくの同サイズになる。重量に関しては後述の冷却機構の変更も影響しているのか、若干ながら増えている。

注目するべきは背面のインターフェイスだ。先行するiMac同様、サンダーボルトは2から3に変更されているが、こちらは4ポート搭載されている。これはMacBookプロの仕様から考えると、コントローラが2系統搭載されており、アグリゲーションして使用可能だと推測される。

仕様が異なるのは、実はサンダーボルトだけではない。SDカードスロットは最大転送速度が312MB/sの「UHS-II」規格に、イーサネットポートは従来の10倍の転送速度になる10ギガビットベース規格にそれぞれ対応した。

サイズとカラー

通常のiMacが2サイズで展開するのとは異なり、iMac Proは27インチモデルのみの提供となる。外寸に関しては高さ、幅、スタンドの奥行きともに通常のiMacとの違いはないが、重量のみ約260g増えて9.7kgとなっている。また本体カラーも従来のシルバーから、MacBook Proシリーズにも登場した新色スペースグレイに。これに合わせて付属するキーボードやマウス、Magic Trackpadといった周辺機器も同一のカラーで提供される。

インターフェイス

背面ポート群をチェックすると、iMacと異なりThunderbolt 3のポートが4つ搭載されている。また、SDカードスロットとEthernetポートがプロの求める性能にまで高速化されていることは大きなトピックだろう。

すべてがハイエンド

次に内部に目を向けてみよう。まず目を引くのはプロセッサだ。コア数は最低でも8コア、さらに10コアもしくは18コア選べるのはアップルも「誤植ではない」と改めて強調するほど桁外れのスペックだ。現行のMacプロですら最大12コアまでしか選択できないことを考えると、性能が完全に逆転してしまっている。採用したブランドは、ワークステーション向けのハイエンド「ジオン(Xeon)」の次期モデルだ。

ハイエンドを採用するのはCPUだけではない。GPUに採用されるレイディオンプロ・ベガ(Radeon Pro Vega)は、AMD社が総力を結集して開発を行っている次世代機だ。シングルカードの演算性能としては現行製品の3倍以上、現在最高峰といわれているエヌヴィディアのタイタン(TITAN)を凌ぐパフォーマンスを発揮するという。これによってレンダリングのような描画性能だけでなく、VRやAR、そしてGPUをフル活用することで爆発的に進化しているディープラーニングやAIといった分野での演算など、あらゆる分野のプロのニーズに応えられる。まさに「モンスタークラス」のラインナップを惜しげもなく投入している。

このハイエンドCPUとGPUを支えるために、メモリとストレージも高い基準のグレードが選別されている。メモリは2666MHzのDDR4規格が指定されたが、これはDDR3だったMacプロはもちろんiMacの2400MHzタイプよりもアクセス速度が早い。さらにサーバなどで用いられるECC(エラー訂正性機能)付きのモジュールが採用、スピードと品質はかなり厳しく求められるがその一方で最大搭載量が128GBまで対応するのはプロユーザにとっては朗報だろう。

これはストレージも同様で、速度面でボトルネックとなるハードディスクは候補から外れSSDのみとなった。また、今回の構成では最低でも1TB、さらにオプションでは2TBと新たに4TBが提供されることになった。このサイズになるとスループット効率も高まり最大3GB/sとなることから、4Kを超えるビデオ編集でもリアルタイムで可能になるはずだ。

CPU

プロセッサは最低でも8コア、最大で18コアモデルを用意。使用するブランドもコンシューマ向けの「Core」ではなく、歴代のMac Proでも使われてきたサーバやワークステーション向けの「Xeon」が採用された。

GPU

グラフィックスカードはAMDの次期ハイエンドモデル「Radeon Vega」の搭載を予告。最大64コアを搭載するこの新型機はiMacの3倍以上の性能を発揮することが可能。業界でも「世界最強のGPU」と期待も高い。

メモリ

メモリは既存のMacシリーズの2倍になる最大128GBまでに初めて対応する。こちらも最新の2,666MHz DDR4 ECC(エラー訂正機能付)タイプとなり、32GBモジュールまでに対応すると推測される。

最高のMacへ

これだけのハイスペック・マシンと化したiMacプロだが、フルパワーで使ったときの熱量も比例して劇的に高まるのは想像に難くないだろう。これに対応するようにアップルのハードウェア・エンジニアリングチームはその内部の冷却機構を完全に刷新している。筐体背面底部には横に広くスリットが設けられ、吸気量を増やしているがそれを吸い上げて排熱しているのが、本体の中心部のほとんどを占有するように設置されたデュアルファンと巨大なヒートシンクだ。結果、エアーフローで75%、熱容量を80%増加させることでこの目も眩むような構成を現実に成立させている。

見た目だけでなく中身でも「最高なMac」が世の中に出てくるであろう今年の年末は、過去最高にエキサイティングになることだけは間違いない。

ディスプレイ

ディスプレイパネルはiMacと同じP3色域、10Bit解像度、500ニトの明るさを持つRetina 5Kモデルが採用された。また、外部ディスプレイへの接続は5K、10Bit解像度が最大2台までに拡張されている。

ストレージ

内臓ストレージはフラッシュストレージのみに限定される。標準は1TBだが、オプションで2TBと今回新たに4TBが提供されこととなり、Fusion Driveを積んだiMacよりも最大容量で大きくなった。

Ethernet

Macに1Gb Ethernetが採用されてから15年以上経つが、今回初めて10Gbへとその仕様がアップグレードされた。これによってネットワーク経由のファイル共有などもハード面で業務仕様水準となった。

冷却機構

外見はiMacのままだが、内部機構はCPU、GPUの熱量の増加に合わせて完全にエアフローが再設計されている。筐体背面には吸気用のスリットが横に広く設けられていることも、熱交換量の多さを示すものだ。

スピーカ

冷却機能の再設計による恩恵は、スピーカにも好影響を与えている。新たに導入されるステレオスピーカは周波数応答、低音および総出力数のいずれも強化されている。リスニング環境としてその体験は向上するだろう。