【実践1】ハードウェアを診断し問題を解決しよう
ハードの問題を特定するApple診断
観察や基本的なトラブルシューティングを試しても、不具合が解消しない。となると、問題はハードウェアにあるのかもしれません。しかしハードのトラブルは、見極めが難しいのが現実。そこで、macOSが備える「Apple診断」を利用して、ハードの問題を特定します。
Apple診断で問題が見つかった場合、画面に表示されたリファレンスコードをメモしておくと、あとで修理の依頼をするときに役立ちます。また、診断後直接アップルに修理の相談を送信することも可能です。その際、リファレンスコードやシリアルナンバーなどアップルが必要な情報を自動的に抽出するため、効率よく修理の依頼ができます。
システムを終了し、Macの操作に最低限必要なキーボード、マウス、ディスプレイそして電源以外の機器を取り外します。電源ボタンを押したらすぐに[D]キーを押したままにし、画面が表示されたら手を離します。
Apple診断が起動し「Macを検査中」という画面が表示されます。環境にもよりますが、数分程度の時間を要します。プログレスバーが右端まで進めば終了です。
検証が終了すると、診断結果が表示されます。問題が見つかった場合はリファレンスコードをメモしておくといいでしょう。修理サービスにアクセスする場合は[開始する]をクリックします。終了する場合は[再起動]または[システム終了]をクリックします。
診断結果の画面で[開始する]をクリックした場合は、診断が終了して復元システムが起動します。自動でサファリが起ち上がり、修理サービスに情報を送信する画面が開きます。
自分でできるハードのメンテナンス
買ったときは快調だったMacが、最近はなんだかもっさり…。という経験は誰しもあるはず。こんなときは、メモリの増設や内蔵ストレージの交換が効果的です。ただし、自分でパーツを交換・増設したことに因る不具合については補償の対象外になることがあるので注意が必要です。
また、現行のMacBookでは、基盤に貼り付けるタイプのメモリを採用しているため、ユーザによる交換ができません。
MacBookシリーズのメモリ増設/交換
現行のMacBookシリーズは、いずれもオンボードメモリのためユーザによる増設ができません。容量を増やしたい場合は購入時のオプションで選択しましょう。
ファンのホコリを掃除して夏の熱暴走対策
気温が上がってくると悩ましいのが、ノートブックのオーバーヒートと、それに伴うファンの回転です。特に負荷のかかる操作をしていないのにファンが回っているときは、ファンの汚れを疑ってみましょう。ホコリが付着していると、通気が十分にできません。思い当たる場合は、ファンの掃除を行いましょう。用意するのは、裏蓋を開けるドライバーとホコリを飛ばすエアダスターです。なおこれらの作業は、自己責任で行ってください。
ネジを外して裏蓋を開けます。MacBook Pro(Early-2015)は、ペンタローブタイプのドライバーを使ってネジを外します。機種によってネジの形状やサイズは異なります。
蓋を開けるとファンが確認できます。羽の溝についたホコリをエアダスターで吹きとばしましょう。力を加えるなど、無理な掃除は行わないようにしてください。
Macの修理を依頼する
Apple診断でハードウェアに問題が見つかった。あるいは、考えられる限りのトラブルシューティングを試し、OSをクリーンインストールしても問題が解決しなかった場合は、修理や点検を依頼することになります。アップル製品の修理窓口は、大きく分けて3つあります。
(1)アップルサポートに問合せ
(2)配送修理
(3)持ち込み修理
このうち、(1)のアップルサポートへの問合せは、電話やメール、チャットなどの手段を使って、Macの不具合について問合せを行います。修理が必要と判断された場合は、(2)または(3)に進みます。
なお、問合せや修理依頼をする際には、前もって対象となるMacのシリアル番号とアップルID、Apple診断を行った場合はリファレンスコードを準備しておきましょう。
Macの修理の流れ
(1)サポート問い合わせ
問い合わせは、AppleのWEBサイトから申し込むか、サポートに直接電話をかけます。【URL】https://getsupport.apple.com 【電話】0120-27753-5
(2)配送修理
配送修理を申し込むと、Apple指定の配送業者がMacを引き取りに来てくれます。申し込みは上記のサポート問い合わせから行います。
(3)持ち込み修理
対象のMacをApple StoreのジーニアスバーやApple公認正規プロバイダに持参します。ジーニアスバーは、事前予約が必要です。
シリアルなどの確認
まずアップルメニューの[このMacについて]を選択します。[概要]タブに、そのMacのシリアル番号が記載されています。ここでは、Macのモデルを確認することもできます。
保証状況を調べるには、WEBブラウザで、https://checkcoverage.apple.com/jp/ja/を開き、Macのシリアル番号を入力します。
Macの一括修理価格
Macの修理価格は、機種やグループごとに設定されています。同じ保証対象外でも、自然故障と事故による損傷では料金が異なるので注意が必要です。
※1:グループ2は、ロジックボード、ディスプレイ、SSDが修理箇所に含まれた場合に適用。デスクトップにはグループ分類なし。
※2:事故による損傷修理は、算定条件が組み合わせによって異なる。そのため、調査結果はあくまで参考価格としての表示。
※3:MacBook Pro15インチは、レティナモデルも含む。
※4:iMacは、4K/5Kモデルも含む
【実践2】システムやソフトが原因のトラブルを解決する
ここでは、Macのソフト的なトラブルの原因究明と対処法について解説しましょう。
まず、システム起動がうまくいかない、ログインできてもなんとなく遅いといった場合には、セーフブートが有効です。セーフブートを行うと、ディスクユーティリティでの修復と同等のディスチェックが行われますし、カーネルキャッシュと呼ばれるシステム起動を高速化するためのキャッシュがクリアされます。これにより、多くのトラブルが解消することがあります。セーフブートしたらいったんログインしてからもう一度再起動してください。
次にチェックするポイントは、ログイン項目とウインドウの再開機能です。前者はログイン時に自動的にソフトを起動する機能、後者はログアウト時に開いていたウインドウを復活するmacOSの機能です。前述したとおりMacのトラブルはたいていは再起動(再ログイン)すれば解決するのですが、ログイン項目や再開機能がトラブルを再発させてしまう場合があるのです。なので、これらの機能をいったん止めて、問題が起きるかどうかチェックする必要があります。
さらに、問題がシステム(macOS)にあるのかユーザデータ([ホーム]フォルダ内の書類)にあるのか判断するためには、別のユーザアカウントからログインしてみることも有効です。新しく作ったユーザアカウントでも問題が起きるならばシステムの損傷が考えられるので、次のセクション「応用1」でOSの再インストールを実施してください。逆に別アカウントで症状が出ない場合は[ホーム]フォルダに原因があると考えられます。
セーフブートを行う
Macを再起動して[シフト]キーを押し続けるとセーフブートになります。
セーフブートに成功するとログインパネルの右上に[セーフブート]と表示されます。
いったんログインして状況を確認してからMacを再起動させます。
ログイン項目をチェック
システム環境設定の[ユーザとグループ]→[ログイン項目]開いて登録されているソフトをチェックします。自分でインストールしたソフトをすべて削除してMacを再起動してみます。
メニューバーに常駐するソフトには、ログイン項目とは別の仕組みで自動起動するものがあります。各ソフトの環境設定(Preferences)をチェックしてみてください。
起動ディスクの[ライブラリ]→[StartupItems]、[システム]→[ライブラリ]→[StartupItems]にも項目がないかチェックしましょう。
ウインドウ再開を切る
再開機能によってログアウト前のソフトが復活し、それがトラブルの原因になることもあります。システム環境設定の[一般]を図のように設定します。
もしくは、システムの再起動時に[再ログイン時にウインドウを再度開く]のチェックを外します。
別のアカウントでログイン
新しいユーザを作って試します。システム環境設定の[ユーザとグループ]パネルで[+]ボタンをクリック。
新しいユーザアカウントを作成します。[新規アカウント]を[管理者]にしておいて、ほかのフィールドは適当に埋めます。
出来上がったらログアウトするかファストユーザスイッチでそのユーザアカウントでログインします。アップルIDでのサインインを求められますがスキップしましょう。
トラブルの原因の判定
ここまでの手順でトラブルの原因が絞り込めます。セーフブートを行ったあとの再起動で問題が解決したときは起動キャッシュなどが原因ですが、再起動すると問題が戻ってしまうときは、サードパーティ製のシステム環境設定パネルやドライバが原因なのでアンインストールする必要があります。
ログイン項目や再開機能のオフで問題が解決したときは、ログイン時に起動していたソフトに問題があります。アップデートしたり使用を中止しましょう。
別のアカウントでログインすると問題が起きない場合は、[ホーム]フォルダ内に最近追加したファイルがトラブルの原因と考えられます。[ライブラリ]フォルダの[フォント]、[PreferancePane]などをチェックしてください。
システム環境設定パネルをアンインストールするには、システム環境設定を起動して、削除したいパネルの上でコンテキストメニューを出し、[(パネル名)を削除]を選びます。
日本語入力ソフト、周辺機器のドライバといったシステムに組み込まれるソフトは、アンインストーラが付属するはずなのでそれを使います。
ログイン項目は1つ1つ戻すことでトラブルの原因となっているソフトを特定できます。
ファインダで[オプション]キーを押しながら[移動]メニューを開いて[ライブラリ]を選びます。
ファインダで[オプション]キーを押しながら[移動]メニューを開いて[ライブラリ]を選びます。日付順にソートしてトラブル発生時のフォルダを重点的にチェックします。
フォントがトラブルの原因になることがあります。サードパーティ製ソフトが勝手にフォントを追加することもあり、[Fonts]フォルダをチェックして見覚えのないフォントは削除してみましょう。
起動しないときの「奥の手」
セーフブートでも起動しないときは、電源を入れてすぐに[コマンド]キーと[S]キーを押してシングルユーザモードを試してください。
これは、セーフブートよりも読み込むコンポーネントを減らし、GUIの機能もカットして起動するモードです。操作はターミナルコマンドで行い、マウスやトラックパッドも使えません。このシングルユーザモードでは、最低限のメンテナンスが自動実行されるので、「reboot」と入力して[リターン]キーを押し通常モードで再起動すると問題が直ることもあります。
なお、レティナディスプレイ搭載機ではスケーリング表示できないため極小表示になるので、拡大鏡を用意したほうがいいでしょう。
シングルユーザモードでは黒バックに白いテキストのみのコマンドラインで起動します。
【ペンタローブネジ】
ペンタローブネジとは5角形の特殊なネジで、MacBookの背面やiPhoneなどに使われています。脱着には専用のドライバーが必要となります。以前は6角形のトルクスネジが使われていたこともあります。
【そのほかの修理】
上記で挙げたAppleやApple公認正規プロバイダ以外にも、パソコンショップなどへの持ち込み修理が可能です。ただし購入後1年有効の製品保証やAppleCareが利用できない点に注意しましょう。
【表記ゆれ】
セーフブートはセーフモードと呼ぶこともあります。アップルのサポート資料ではセーフモードという表記が多いのですが、本文の図にもあるようにMacの画面にはセーフブートと表示されます。
【デフラグ】
ウィンドウズでは定番のトラブルシューティングにはデフラグがありますが、ディスクユーティリティにはその機能がありません。Macでは不要とアップルも説明していますし、SSDのデフラグはフラッシュメモリの寿命を縮めるだけです。