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[インタビュー]一ノ瀬雄太

著者: 山田井ユウキ

[インタビュー]一ノ瀬雄太

( 職人とその道 )

一ノ瀬雄太 グラフィックデザイナー・アートディレクター

多摩美術大学在学中から株式会社東京ピストルでアルバイトを始め、現在はフリーランスのグラフィックデザイナー/アートディレクターとして活動中。雑誌『走るひと』のアートディレクションなど、さまざまな媒体の制作に携わる。また、ロックバンド「快速東京」のギタリストとしても活動しており、2016年8月にはバンド初の7インチレコード作品「快速東京オリンビック」を発売。現在はクリエイティブチーム「CEKAI」にも所属している。【URL】ichinoseyuta.tumblr.com

魅力を最大限に伝えるために

雑誌『走るひと』や渋谷パルコ「グランバザール2016」の告知ムービー、さらには自身が所属するバンド「快速東京」のアートワークまで、ありとあらゆる媒体の作品に携わるグラフィックデザイナー/アートディレクター・一ノ瀬雄太氏。そのキャリアは、東京・渋谷にあるデザイン・編集の会社「東京ピストル」から始まる。

多摩美術大学を卒業後、グラフィックデザイナーを志望していた一ノ瀬氏は同社にアルバイトとして入社。デザイナーとしての才能を発揮し始めた。そこで学んだのは、「デザインとはシンプルであるべし」という考え方であった。

「1週間練りに練ったデザインを出すんじゃなく、30分くらいでシンプルなデザインをパッとまとめられるようになってほしいと、当時の上司に言われたんです。美大でいかに作品に個性を入れるかを学んでいた僕としては、そんなこと言われても…ってショックを受けました(笑)」

「シンプルなデザイン」とは、すなわち「コンテンツの魅力を最大限に伝えるデザイン」ということでもある。素材が良ければ、塩コショウで味を引き立てるだけでいい。コンテンツの魅力を伝えるための潤滑剤、それがアートディレクションという仕事だと一ノ瀬氏は言う。

ターニングポイントとなったのは入社して2年半ほどたったとき。学生時代から続けていたバンド「快速東京」での活動がCDデビューするなど本格化したことで、会社との両立が難しくなった。

「会社側は好きなことやってていいよと言ってくれたのですが、フェスに呼ばれたり、アルバムのプロモーションで忙しくて出社できなくなったりして、このまま在籍していても会社に迷惑をかけてしまうと思ったんです」

退職後、フリーランスのグラフィックデザイナー/アートディレクターとして独立した一ノ瀬氏。持ち前のデザイン力とバランス感覚を武器に、意欲的なデザインを次々と生み出していくことになる。