ビデオ会議のメリットって?
タカハシ●おや、営業2課のタナカ係長からまた依頼が来てます。なになに、今度はビデオ会議を導入したいという相談ですね。そういえばビデオ会議ってあまりしたことがないんですけど、あれって便利なんですか?
ハヤシバラ●便利かどうかはさておき、タカハシ君はビデオ会議についてどんなメリットがあると思ってます?
タカハシ●そうですね…遠隔地とも会議できるから交通費や時間の節約ができたりとかですかね?
ハヤシバラ●数字に表れるメリットはそうですね。でもそれなら電話やメール、テキストチャットだけでもいいはずです。むしろ相手の表情を見ながら説明できたり、「感情の共有」がポイントになってきます。あと、リアルタイムで相手との時間も共有するので、この議題が重要であると認識させる心理的な効果も無視できません。これは数値化が難しいので見落とされてることが多いようです。
タカハシ●そうか! 単なる「情報の共有」よりも視覚的コミュニケーションならではのメリットがあるんですね。テキストチャットだと言い回しに気を遣って時間がかかったり、相手の返信を待たずに別の用件を書き込んだりして、齟齬が生じたりしますね。だとしたら、なぜビデオ会議の設備が使われなくなったのでしょうか?
ハヤシバラ●会議室にあるテレビ会議システムですね。あれはISDN接続だから通信速度が遅いし、画質も音質もひどいんですよ。それに完全に固定回線だから会議室も予約しなくちゃならない。それよりMacBookやiPhone、iPadなどモバイルデバイスが普及してワークスタイルが変化したというのが大きいと思いますね。
タカハシ●自分の席や外出先でも参加できるほうがいいですしね。
複数拠点で同時に会話
ハヤシバラ●そういうわけですので、今日はモバイルデバイスで使えるビデオ会議のソリューションを調査してください。タナカ係長のメールを補足すると、関西方面の拠点は京都と大阪にありますので、同時に複数の拠点と会議できるとなおよいのではないでしょうか。レポートは午後5時までによろしくお願いします。
タカハシ●がってんだ! 僕の本気お見せします! 一応、iPhoneやiPadでも使える方法について調べてみます。
ハヤシバラ●昔Macにあった「iChat AV」なら最大4人までビデオ会議できたんですけどねえ……(ボソッ)
タカハシ●え? いま何か言いましたか?
ハヤシバラ●いえいえ、年寄りの昔話です。この数年でも結構状況が変わってきるようなので、フレッシュな情報をお願いしますよ。
標準ビデオ通話ソリューションのフェイスタイムではダメなのか?
タカハシ●まずは、Mac標準でできる方法から調べていくか。アップルのCMなんかを見ているとビデオ通話推しみたいだから、この「フェイスタイム」だけで解決するんじゃないかな?
ソフトを起動したらすぐにMac搭載のカメラが起動して、連絡先の情報から通話相手のビデオ通話アイコンをクリックすればすぐ開始できる。アップルらしいスマートな仕組みだな。
あれ? でもこれって1対1のビデオ通話だから同時に複数の拠点とビデオ通話できないのか。「メッセージ」ソフトではグループチャットはできるみたいだけど、これはテキストと画像、音声とかだもんな。使い勝手はいいけど、これではタナカ係長の要望に応えられない。それと、フェイスタイムだと相手がMacかiPhone、iPadユーザに限られてしまうのか。大阪支社は完全にMacに移行したとは聞いていないので、もしかしたら1対1であっても使えない場合があるんじゃないかな。Macユーザとしては残念だけど、この方法は今回はなしってことで。
そういえば、僕がプライベートで使っているLINEではどうだろう。iPhone、iPadが基本だけどMac版のクライアントソフトもあるし。あー、でもやっぱりこっちも基本は1対1のビデオ通話のようだ。
FaceTime
【開発】アップル
【価格】付属ソフト
標準ソフトのフェイスタイムであれば、アップルIDのあるユーザ同士すぐにビデオ通話が開始できます。操作も簡単ですが、同時に複数のビデオ通話には対応していません。
LINEにもビデオ通話機能があります。Wi-Fi環境でないと通信費が気になってしまいますが、自分の好きな場所ですぐに1対1通話できるのと、アンドロイドユーザともビデオ通話できるのが利点です。
WEBを使ったビデオ会議はスカイプかハングアウトで決まり?
タカハシ●さて、そうなるとほかのソフトやサービスから探すことになるな。業務用のWEB会議システムは安いところで15万円くらいからあるみたいだけど、月額料金がかかるのか。なるべく低コストで使えるもので調べてみよう。
どうやら、マイクロソフトの「スカイプ(Skype)」とグーグルの「ハングアウト(Hangouts)」が二大勢力みたいだな。どちらも無料アカウント登録は必要だけど、ビジネスプランへのアップグレードがあるのも法人導入には適しているみたい。
おや、グーグルからは「グーグル・デュオ(Duo)」というアプリが新しく出ているようだけど…これはフェイスタイムとかLINEの対抗という位置づけかな。Mac版がまだないので今回はパスしよう。
スカイプは無料のビデオ通話やグループ通話、インスタントメッセージのほか、低価格で固定電話とも通話できるコミュニケーションツール。以前はグループビデオ通話は有料でしたが、現在は無料となっています。【URL】https://www.skype.com/ja/
グーグル・ハングアウトはWEBブラウザ上でビデオ通話、音声通話、テキストメッセージがやりとりできるWEBサービスです。サファリでも問題なく利用できますが、グーグル・クロームアプリとしても提供されています。【URL】http://hangouts.google.com/
グーグル・ハングアウトで3人以上の会話を試してみる
タカハシ●候補が絞られたところで、今度は実際に試してみるか。まずはハングアウトからだ。社内でも僕の周りではグーグル・アカウント持っている人が少ないから、導入するときにはその部分がネックになるかもしれないな。
…おや? サファリで使うにはプラグインが必要なのか。ここで躓く人が出るかも。
まずは、社内で1対1のビデオ通話のテストからやってみよう。問題なくつながるけど、途中で画質が悪くなったり、やや接続が不安定な気がするな~、ネットワークの状態に影響を受けてしまうんだろうか。フルスクリーン表示だと余計にその画質の粗さが目立ってしまう気がするし。ハヤシバラ課長も言ってたけど、相手の顔がよく見えないんだったらビデオ会議の意味ってあまりないよね。WEBサイトにはグループ会話は最大150人、ビデオ通話は最大10人まで同時に可能と書いてあるけど、通信環境によっては数人が実用的な限度ってところかな。
いいところはiPhoneアプリもあるのでデバイスを選ばないというところかな。でもこれはスカイプも同じだからアドバンテージというほどでもないね。
サファリでグーグル・ハングアウトを利用するには、最初にプラグインのインストールが必要です。インストールして実行を許可すれば、グーグル・アカウントを持ったユーザ同士すぐにビデオ通話できます。
ビデオ通話の画面です。ウインドウ内に相手の画面が表示され、右下に自分の画面が表示されます。同時に3カ所以上の接続が可能で、現在話している人にメイン画面が自動で切り替わるのはユニークな機能です。
ユーチューブ・ライヴの機能でハングアウトをそのままオンエアできる機能もあります。内容が公開されるので会議に使うことはないと思いますが、イベントで活用するといった利用法は考えられるでしょう。
スカイプで3人以上の会話を試してみる
タカハシ●グーグル・ハングアウトの機能は申し分ないんだけど、初めて使う人にはちょっと慣れが必要かもしれないな。次はスカイプを試してみよう。スカイプはMacアップストアではなくて、WEBサイトからのダウンロードなのね。でも、単体アプリで使えるほうがわかりやすいだろうね。
インターフェイスは、フェイスタイムやハングアウトに比べると堅実な感じで少し面白みに欠けるけど使い勝手は悪くない。画質も十分で相手の表情もわかるし、さっきと同じネットワーク環境だけど安定して表示されるな。もちろん大人数だと画質が劣化したりするけど、5名以下のWEBを使ったビデオ会議なら、これが一番使いやすい気がしてきたな。
スカイプにはMac用のソフトがありますので、マイクロソフトアカウントでサインインしたら、連絡先を登録してビデオ通話を開始しましょう。
3人以上のビデオ通話も可能です。グループビデオ通話は本人も含めて最大25名まで対応していますので、ある程度出席者が多いオンライン会議でも対応できます。
WEBブラウザでも利用できるスカイプが一歩リードか?
タカハシ●スカイプにはMac用ソフトやiPhoneアプリだけじゃなくて、WEBブラウザ版もあるんだ。サファリでスカイプできるというのは知らなかったな~。ベータ版だから仕事にいきなり使うわけにはいかないけど、選択肢が多いというのはいいんじゃないだろうか。
使ってみた感じでは画質も音声も良好で、無線LAN環境以外で使うのは通信代がちょっと怖いけど、WEBブラウザで動作するならOSのバージョンや機種をほとんど選ばない利点もあるね。
フェイスタイムより機能が上というのはアップルユーザとして複雑な気持ちもあるけど、やっぱりマイクロソフトが買収したサービスだけのことはあるなあ。
「Skype Webプラグイン」(ベータ版)を公式サイトからダウンロードします。サファリのプラグインソフトになっているので、こちらをインストールします。
WEBブラウザ上でも音声通話、ビデオ通話、テキストメッセージのやりとりが可能です。
自分の席からの「ビデオ会議」ではなく、多人数が会議室に集まって行う「テレビ会議」のような仕組みをスカイプやハングアウトで利用したいという場合があるかもしれません。そのときは広角レンズのWEBカメラを選べば複数人(一拠点で3~4名程度が現実的)のビデオ会議も実現できるでしょう。
仕事でビデオ通話するならスカイプ
ビジネスプランへの道も用意されている
ハヤシバラ●ビデオ会議の報告書はまとまりましたか?
タカハシ●はい。グーグル・ハングアウトとスカイプで試してみたのですが、今回の仕事で使うのであればスカイプが最適解ということでまとめます。ちょっと定番すぎて意外性はないのですが。
ハヤシバラ●新しいものだけが最高ということはありませんよ。現に、スカイプのグループビデオ通話は以前まで有料だったのですから、当時ならハングアウトのほうがよかったという結論になるかもしれません。両社が競争したことで無料で使えるようになったのですから結果オーライでしょう。
タカハシ●ちなみに一般法人向けのオフィス365だと、スカイプが含まれているプランもあるのですね。
ハヤシバラ●ビデオ会議も共同作業には欠かせないツールになってきた証拠ですね。個人的にはアップルにもう少し頑張ってもらいたかったのですが。