真夜中の墓地。マリーゴールドで飾られた墓石に、真っ白なウエディングドレスを着た女性が座っている。隣の墓では、ガイコツ姿のおじさんたちがテキーラで乾杯中だ。さらに向こうの墓では、楽隊の演奏で人々が踊っている。こんなカオスな墓場は、生まれて初めてだ。
死者の魂が帰ってくるというメキシコの祝祭、“死者の日”の祭りに、僕たちはやってきていた。死者を迎えるというと日本のお盆のようなものだが、その様子は随分違って面白い。街がカラフルなガイコツだらけなのだ。
広場にはガイコツの人形が並び、ガイコツのスイーツや、ガイコツのパン。Tシャツまでもガイコツだ。道路には運動会の万国旗のように、ガイコツの切り絵が飾られている。その中を、これまたガイコツやモンスターの仮装をした人々が、踊りながら一日中、街を練り歩いている。
祭りの夜のメイン会場は、墓場だ。人でごった返したそこには、屋台がずらりと並び、移動遊園地まで来ていた。1つ1つの墓はオレンジの花で飾られ鮮やかで、あちこちで演奏と酒盛りとダンスが行われている。まるで深夜のナイトクラブのような盛り上がりだ。
死者の日のガイコツは、不思議とどれも生き生きしている。食事していたり、踊っていたり、ガイコツなのに、どれも楽しそうで可愛らしかった。こんな死の捉え方も素敵だなと、墓場のクラブで踊りながら、僕は思った。
鈴木陵生(Ryosei Suzuki)
映像作家。2011年より夫婦で世界一周を始める。旅の様子を発信する映像サイト「旅する鈴木」が、平成26年度文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に。2014年11月、DVD&Blu-ray「World TimeLapse」(KADOKAWA)をリリース。 【URL】http://ryoseisuzuki.com