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「読む」~『脳科学は人格を変えられるか?』書評

著者: 徳本昌大

「読む」~『脳科学は人格を変えられるか?』書評

第5回 ハッピーになるためにポジティブ・シンキングの次に必要なこと

脳の特性を知り恐怖に打ち勝とう

「『自分には、良いことは起こらない』という無力感はしばしば、何に対しても消極的な態度や意欲の欠如につながっていく。そして単なる悲観主義が抑うつ症へと発展する原因にもなる。対照的に楽観主義者は、起きた出来事に自分がある程度影響を与えられると思っている。そして問題が起きても、それを継続的な困難としてではなく一時的な障害としてとらえ、敢然と立ち向かおうとする。」(エレーヌ・フォックス)

本書で著者は、脳内のポジティブな回路を「サニーブレイン」、ネガティブな回路を「レイニーブレイン」と呼び、幸せな人はサニーブレインのほうが活発であると説いています。ハッピーであることは私たち万人の望みですが、はたして自分の脳をそのように切り替えることは可能なのでしょうか。

最近の研究で、人間の脳には驚くほど変化する力があることがわかってきました。以前は、7歳までで脳は柔軟性を失い、もう変化できなくなると信じられてきました。しかし、近年急速に発展してきた脳の可塑性の研究によって、高齢になっても人間の脳は変化することがわかってきたのです。私たちは、意識と行動によって、いくつになっても、自分のレイニーブレインをサニーブレインに変えられます。

ここで重要な著者のメッセージは、「ポジティブシンキングだけでは良いことは起こらない」ということです。 物事を前向きに考えるだけではなく、実際に行動に移すことが重要です。世の中には嫌なことがたくさんありますが、それをポジティブに受け止められたら、その次にどう解決すればよいかを考え、適応するようにしましょう。行動し、たとえ失敗しても諦めないことで、私たちは良いことを引き寄せられるようになります。

10年前の私の脳は間違いなくネガティブで、レイニーブレインが優勢でした。ポジティブ思考を取り入れてはいましたが、行動はいつも先延ばし。夢ははるか遠くです。ようやく断酒を決意し、読書とブログを習慣化し始めてからその状況が一変しました。この行動自体が私をポジティブに変え、その結果出版という夢を実現できたのです。

もし、私が行動を起こしていなければ、サニーブレインを優位にすることはできなかったでしょう。このように「アフェクティブ・マインドセット(心の姿勢)」を行動で強化することによって、人生をハッピーなものへと変化させましょう。

脳科学は人格を変えられるか?

エレーヌ・フォックス著

文藝春秋/1728円

2014年刊

徳本昌大

ソーシャルおじさんズ代表、ブロガー、都内広告会社でコンサルタントとして働くビジネスマン。iPhoneとソーシャルメディアが人生を変えた。著書『ソーシャルメディアを武器にするための10カ条』(高橋暁子との共著、マイナビ)など多数。【URL】http://tokumoto.jp/