私が検証しました!
村上タクタ
Webメディア編集長兼フリーライター。出版社に30年以上勤め、バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴ飼育…と、600冊の本を編集し、2010年にテック系メディアを創刊。
[SPEC]
【発売】XREAL
【価格】5万4980円
【主な仕様】[重量]約72g、[ディスプレイサイズ]0.55インチ、[ディスプレイ]Micro-OLED、[画面サイズ]1080FHD、[明るさ]500ニト、[コントラスト]100万:1、[最大リフレッシュレート]120Hz、[視野角]46度、[PPD(Pixel per Degree)]49度、[カラーバリエーション]グレー、赤、[URL]https://www.apple.com/jp/airpods-pro/
眼の前の空間に映像を投影できる
映画「マイノリティ・リポート」のように、いつかは空間にディスプレイを浮かべて仕事をしたいものです。筆者は今のところ、14インチMacBookプロに外付けディスプレイを2台接続し、それらをディスプレイアームで浮かべながら仕事をしています。それなりに便利ですが、頭の位置を画面に合わせている状態なので次第に肩が凝ってくるのも事実です。
しかし、WWDC(世界開発者会議)23で体験してきた「アップル・ビジョン・プロ(Apple Vision Pro)」(以降、ビジョン・プロ)は、この課題をクリアしていました。理想的な空間位置に理想的なサイズのディスプレイを浮かべることができ、位置を気軽にチョイチョイ動かせる。そうなれば楽な姿勢を取って、そこにディスプレイを合わせればよくなります。しかしビジョン・プロは高価ですし、まだ当分は手に入りません。そこで気になったのがAR(拡張現実)グラス「エックスリアル・エア2(XREAL Air 2)」というわけで、本誌編集部に取材機を借りていただきました。
AR/VRというより半透過ディスプレイ
筆者はこれまで、ビジョン・プロやマイクロソフト・ホロレンズ(Microsoft HoloLens)、メタ・クエスト(Meta Quest)、など数々のスマートグラスやVRゴーグルを購入したり体験したりしてきました。本製品はそれらに比べると、いい意味で“普通”な外観。いうならば、電車の中でメタ・クエストを使ったら奇異の目で見られそうですが、これならギリギリ許される感じです(普通のサングラスだと、強弁できなくもないでしょう?)。
本製品の構造については、レンズ上部のフチ部分にOLEDマイクロパネルが埋め込まれています。パネルはソニーの子会社であるソニーセミコンダクタソリューションズ社製で、サイズは0・55インチ。これに映像を投影し、プリズムを介して目の前に映す仕組みです。ジャイロ機能を搭載しているので、表示してる仮想ディスプレイを空間に固定して表示することができます。ARグラスと銘打たれた製品ですが、どちらかというと“半透過の外付けディスプレイ”と捉えていただくとわかりやすそうです。
視野角はもうひと声! だが将来性は感じる
さて実際の使い方ですが、本製品のツル部分に用意されているUSB−Cコネクタに、同じくUSB−Cコネクタを備えるMacやiPhone、iPadを付属ケーブルで接続すると、目の前に色鮮やかなディスプレイが表れます。
実際にMacを使って試したところ、想像以上に解像度が高く、色も美しいので実用に耐えるレベルでした。ただしディスプレイ自体はHD画質なので、表示解像度には限界があります(細い線や文字を見るのは少しツライ)。筆者は最近視力が低下しているので、そのせいもあるかもしれませんが。
また、メーカーの公式写真では、本製品を使うと眼前に巨大なスクリーンが広がっているように表現されていますが、それは少々大げさかも。実際は、1メートル先に20インチのディスプレイ、つまり手を伸ばした距離に14インチのディスプレイがあるような感覚。つまり、視野角が小さめなわけです。Macに表示する文字のサイズを変えることで解決できる部分もありますが、そもそもHD画質の画面が目の前にある印象なので解像度はちょっともの足りないかも。とはいえ、従来のこの手のディスプレイの完成度を考えると、素晴らしい出来栄えといえるのはたしかです。
実際にこの原稿も、ワークチェアをリクライニングさせてリラックスした姿勢で、本製品を使って書いています。今はまだ慣れていないせいか肩に力が入って疲れますが、慣れれば楽になりそうです。仕事以外の用途としては、寝転がってSNSを見たり、動画を見たりするのが捗ります。現実的なところ、これがベストな使い方ではないでしょうか?
iPhoneやiPadで利用する場合、電車や飛行機の中で気軽かつ快適に動画を視聴できるのがいいですね。ただし、ツルの部分にあるスピーカから音が出てしまうので、別途イヤフォンを利用するといいでしょう。また本製品の装着時、手元でiPhoneやiPadのディスプレイを見られないのもネックに感じましたが、操作にマウスを使いつつ「アシスティブタッチ(Assistive Touch)」でポインタを表示するとだいぶ改善されました。
Macの場合は3画面の表示も可能
現在のところ、もっとも使い勝手がよいのはアンドロイドOS(Android OS)のようです。アンドロイドスマホなら、「ネビュラ(Nebula)」というアプリを使って独自のホーム画面をAR空間内に浮かべることができます。そこに、ゲームアプリやウィジットのようなものを表示して、好きなものを選んで起動することができるのです。
ちなみに、Macにも「ネビュラ」が用意されています。ベータ版のためフル機能が用意されているわけではありませんが、空間に最大3画面を固定させる機能は備わっています。ただし視野角は46度と狭いので、同時に3画面は見られません。ほぼ正面の画面のみが表示されており、首を振ると左右の画面が見える感じです。
というわけで、本製品は今後大きな可能性を感じる製品でした。現状では、出張や電車移動が多い方の移動用ディスプレイとして使うのがよさそうですね。
【POINT】Micro-OLEDの画像をプリズムで見る
0.55インチのMicro-OLED(写真上)に映像を投影し、プリズム(写真下)を介して見る仕組み。それをジャイロ機能で一定の位置に固定するかどうかを選んで利用します。
【POINT】ディスプレイサイズはこんなイメージ
本製品を利用している人以外がこう見えるわけではなく、あくまで本製品を使う当人にとってのイメージ図。仕事をする場合はディスプレイサイズがちょっと小さめかも。また、左右にあるディスプレイ(イメージ図では薄く表現)は首を振ることで見えます。
【POINT】楽な姿勢で、仕事やYouTube視聴
リラックスした状態で目の前にディスプレイを投影できること自体は、本製品の大きいメリット(実は、この原稿はこの姿勢で書きました)。ベストな使い道は、ソファやベッドでYouTubeを見られることですね。楽過ぎて、いつまでも動画を観続けてしまいそう。また、電車の中で使う用途にも最適だと思います。
検証報告
□メーカーのイメージ写真はちょっと大げさで、視野角は狭め。しかし、輝度や彩度は高く、実用的といえるのはたしかです。
□特に、出張時や移動中の外付けディスプレイとして“アリ”。YouTubeなどで動画を視聴する用途に最高という印象でした。
製品貸与●XREAL