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JALの安全運航を支える “パイロットが開発したアプリ”

著者: 小平淳一

JALの安全運航を支える “パイロットが開発したアプリ”

米倉れいあ

2005年2月8日生まれ、和歌山県出身。「第43回ホリプロタレントスカウトキャラバン」に合格し、ガールズユニット・821(ハニー)のメンバーに。ZIPの「ベラベラENGLISH」や夜ドラマ「コントが始まる」(ともに日本テレビ)など、幅広い分野で活動中。

皆さん、こんにちは。FileMaker選手権の審査員を務めさせていただく米倉れいあです。今回は、パイロットであり訓練教官、しかも自らアプリ開発まで行うという日本航空の京?裕太さんにお話をうかがう機会をいただきました。航空機の安全な運航を支えるアプリの活用や、FileMakerでの開発はもちろんのこと、パイロットのお仕事についてもいろいろと聞いてみたいと思います。

京?裕太さん(写真左)

JAL運航訓練審査企画部 訓練品質マネジメント室室? / 767??訓練教官・機?。飛行訓練教官としてパイロット養成に携わるかたわら、FileMakerを使った業務アプリ開発も手がける。

安全な運航のために

米●そもそも、パイロットになるための免許はどうやって取得するんですか?

京●旅客機を飛ばすためのライセンスや免許は1つではなく、6~7種類くらいあります。

米●たとえばどんなライセンスがありますか?

京●まずはベースとなる操縦士ライセンスをとります。そのあとに、雲の中に入っても安全に運航できるよう、計器だけを見て操縦するスキルも必要ですし、さらには交信で使う英語ライセンスなどもあります。

米●やっぱり飛行機の操縦って大変なんですね。でも、最近の飛行機って自動操縦ができると聞きました。

京●たとえば離陸時は、鳥が飛んできたり、咄嗟の判断が求められるようなケースがあるので、パイロットは自分で操縦しなければなりません。

米●自動操縦になったら休憩が取れるんですか?

京●自動操縦中であっても、想定外のことが起こる可能性はいつでもあります。もちろん、一部の機器にトラブルが起きても別の機器がカバーするというように何重にも安全対策が施されていますが、それが安全に働いているかどうか、常にパイロット2人でチェックしています。

訓練で向上する安全

米●パイロットの方はiPadをどのように利用しているんですか?

京●iPadの中にはマニュアル類が全部入っています。それまで、いわゆるフライトケース(パイロット用バッグ)の中は紙のマニュアルでいっぱいでした。ほかには、パイロットの訓練の記録を行うiPadアプリも使っています。

米●訓練では、具体的に何を行っているんですか?

京●ライセンスを取得したり、維持するための訓練です。パイロットの場合、ライセンスの維持審査が1年に1回あって、もし不合格になると操縦できなくなってしまうのです。

米●自動操縦ができるのに、どうしてそんなに訓練が必要なんですか?

京●空を飛ぶうえでいくつかルールがあります。その内容が頻繁に変わっていくので、知識をアップデートしなければならないのです。そのために、シミュレーターという機械を使った訓練も行っています。

米●シミュレーター…?

京●実際の旅客機の操縦席が再現されている装置で、窓の部分は全部画面になっています。そこで、いろいろなシナリオを想定した訓練を行います。

米●とても緊張しそうですね。

京●訓練では、あえて想定外のことが起きるので、やっぱり緊張します。でも、訓練で体験したことが、実際のフライトで起きることもあります。

米●訓練で経験しているからこそ、実際に起きても冷静な対応ができるというわけですね。それで、その訓練のときにiPadアプリを使うんですか?

京●シミュレーター訓練の間はそれだけに集中します。そのあとに訓練した側とインストラクターで訓練内容の振り返りを行って、最後にインストラクターがアプリで訓練の記録をつけます。

米●それがFileMakerで開発したアプリですね。どうして開発会社に依頼せずに、自分たちで作ろうと思ったのですか?

京●一番の理由は、必要なものを素早く形にできるからです。社内から出るさまざまなリクエストに柔軟に対応するためには、自分たちで開発するのが最善だと思っています。

米●京谷さんご自身がアプリを開発しているんですよね。以前からFileMakerに詳しかったのですか?

京●開発チームに入るまでは触れたことはありませんでした。私は、社内の開発者としては3代目なのです。先代、先々代が作っているのを見ながら自分で試行錯誤して、3~4年くらいで業務に使えるものを作れるようになりました。そこからたくさんのアプリを開発して、教官用の訓練記録アプリやパイロットの資格管理アプリなど、今は使っていないものまで含めると60~70本くらい作りました。

米●すごい! FileMakerの便利な点ってどんなところですか?

京●たとえば、アプリ画面のレイアウトも自由に設計できる点は便利だと思います。作ったアプリが「使いやすい」って言ってもらえると、うれしいですよね。

米●旅客機の操縦もできて、さらにアプリの開発もできて。お忙しいのにさまざまなことをこなせるのがすごいです。

京●やっぱり好きだからだと思います。FileMakerのアプリ開発も、楽しみながらやっていくのが秘訣ではないでしょうか。

米●今回お話を聞いて、安全な空の旅のためにいろいろな取り組みをされていることがわかって、改めて感謝の気持ちを感じました。今日は本当にありがとうございました。

iPadを使ってさまざまな業務を行うJALのパイロット。iPadの中にはマニュアル類のほか、訓練用のさまざまなアプリが入っています。

機長や副操縦士への昇格課程において使用するアプリ「CBCT Upgrade」。各項目がグラフィックで見やすく表示されています。

飛行訓練教官用の資格管理アプリ「JQ2」。教官として持っている資格を、一元的に管理するものです。

企画協力●FileMaker選手権2021事務局

※新型コロナウイルス感染対策を徹底し、取材を行いました。なお、撮影時のみ、身体的距離を保ったうえでマスクを外しています。