メモを撮影した画像を投稿する。ツイッターやインスタグラムで長文メッセージを伝えるテクニックのひとつだ。今、真摯なメッセージを直接届ける手法として数多くの芸能人や有名人がiPhoneの「メモ」のスクリーンショットを利用している。「メモ」が謝罪・声明ツイートのデファクトスタンダードになったのはなぜか。
「メモ」が伝えるメッセージ
思いついたことやメモなどを素早く書きとめられる「メモ」アプリ。欧米ではこのアプリがソーシャルメディアを通じたメッセージ発信における唯一無二のツールになっている。
今年2月にトランプ政権がメキシコとの国境の壁の建設を進めるための「非常事態」を宣言したとき、サラ・サンダース報道官は政府声明の内容をツイッターでも公表した。そこに添付されていたのが、メッセージが書き込まれた「メモ」アプリのスクリーンショットだった。キャプチャ画像の添付は、長いテキストを投稿できないツイッターやインスタグラムで長文メッセージを伝えるための“テクニック”である。それが非常事態宣言の説明という政府と国民との直接的な対話に用いられた。
こうした「メモ」アプリのキャプチャが最初に話題になったのは、2015年に歌手のアリアナ・グランデが「ドーナツ騒動(※1)」を謝罪するメッセージに用いてからだろう。
謝罪の成否は芸能生命を左右する。一昔前ならトークショーや報道番組に出演して自ら説明したり、報道関係者向けのプレスリリースを出していた。しかし、若いモバイル世代に直接メッセージを届けたいならソーシャルメディアほど効果的な方法はない。
かといって、連続ツイートやインスタグラムのキャプションに長い文章を書き込むといった方法では、どれも読みにくい。ワープロやエディタのスクリーンショットにしても、当時はあまり好まれていなかった。文字だらけで、ツイッターやインスタグラムの良さを消しているものばかりだったからだ。
ところが、アリアナ・グランデのメッセージは読みやすく、ファンに謝罪の気持ちをストレートに伝えるものだった。「メモ」アプリは、オフホワイトのバックグラウンドで1枚の紙のようにシンプルで、文字が美しく映える。フォントもふざけすぎず、かた過ぎず、1枚のスクリーンショットに読みやすいちょうど良い分量のテキストが収まる。
これを機に、今や芸能人やスポーツ選手が謝罪や説明、公開討論など、さまざまなメッセージの伝達に用いるようになった。最近だと、今年1月に歌手R・ケリーのスキャンダル(※2)が報じられた際に、R・ケリーと度々コラボレーションしてきたレディ・ガガが怒りと後悔のコメントをツイッターで公表した。
また、日本でも欧米同様に著名人を中心にこの試みは浸透している。水泳の池江璃花子選手がツイッターにて白血病を公表した際、自身のメッセージを綴った「メモ」アプリのスクリーンショットを公開したのも記憶に新しい。