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Apple Watchの心電図機能は本当に効果があるのか?

著者: らいら

Apple Watchの心電図機能は本当に効果があるのか?

Apple Watch Series4の目玉機能のひとつである心電図。発表時の説明どおり、計測はとても簡単で、1分とかからずに心臓の正常な拍動をチェックできる。さらに、米国での提供開始後すぐに心疾患の早期発見につながったという男性が現れ、心疾患治療の改善につながるという期待が高まっている。

賛否両論の中で

アップルウォッチ・シリーズ4が搭載する心電図機能(ECG/EKG)を利用できるようになった米国では、同機能を使って不整脈の一種である心房細動を見つけられたという報告が相次いでいる。誰でも簡単に利用できる心電図によるトラブルを懸念する声もあるが、まずはポジティブな効果が確認された。

心電図機能は、昨年12月にリリースされたウォッチOS 5・1・2のアップデートで「心電図」アプリが追加されて利用できるようになった。ただし、最初の提供地域はFDA(米食品医薬品局)の認可を受けた米国のみ。日本を含むほかの市場での提供については未定であり、米国において提供地域の拡大につながる成果が挙がるか注目されている。

アップルウォッチを使った心電図の計測はとても簡単だ。「心電図」アプリを起動し、指をアップルウォッチのデジタルクラウンに当てて30秒待つ。心臓の拍動が記録され、正常なリズムであるかが分析される。

米国の死因のトップ3は、心疾患、がん、事故である。その中でがんによる死亡率は1991年をピークに減少し続けているが、それに比べて心疾患の減少は鈍い。そのため、多くの医師や研究者がアップルウォッチの心電図機能搭載を歓迎している。

だが、ウェアラブルデバイスを通じた手軽な心電図計測の影響がどのように及ぶかはまだ定かではない。計測データのちょっとした乱れに人々が強いストレスを感じたり、不要な診察を求める人が増える可能性を心配する声もある。

心臓病について知る

アップルもその点を留意しているようで、簡単に心電図をとれるようにする一方で、誤解や誤用を防ぐデザインを徹底している。心電図を使うと、その過程でユーザは心臓病や心電図に関する正しい知識と、心電図機能の使い方を自然と身につけられる。FAQを開く必要はない。

心臓の周囲に多数のセンサを貼り付けて計測する医療機関の心電図検査に比べると、アップルウォッチの心電図は簡易的な計測だ。心臓病に関するあらゆる異常を検出できるわけではない。心房細動をチェックしたり、心拍数を知ることはできても、心臓発作、血栓や脳卒中は発見できない。ほかにも高血圧やうっ血性心不全、高コレステロールなど心不全を引き起こす疾患はたくさんある。

また、アップルウォッチの装着や計測時の正しい姿勢、指の触れ方などが不十分だったら判定に十分なデータを得られない。そうした説明をアニメーションも活用してわかりやすく、初回設定時や記録を確認したときなど、折りに触れてユーザが情報を目にするようにしている。

それらを踏まえて、上手に利用することでアップルウォッチの心電図が真価を発揮する。いつでもすぐに記録できるのが、アップルウォッチで心電図をとれる意義だ。動悸を感じて病院で心電図検査を受けても、その時点で動悸が収まって問題が見つからないケースは少なくない。その場合、しばらく様子を見るか、ホルター心電図を装着して改めて継続計測することになる。その点、違和感を覚えたときすぐに手首に装着しているアップルウォッチで心電図をとっておけば、最初に医師に相談した段階で適切な診断に結びつけられる可能性が開ける。心臓疾患において、その違いは大きい。

アップルウォッチのユーザ全体の中で、日常的に心電図の計測を必要としている人は多くはないだろう。でも、そうではない人も、いつでも記録できる準備をしておけば、いざというときにとても有用なデータを得られる。転ばぬ先の杖になる。

心電図機能の使い方

(1)心電図をとるには、Apple Watchで「心電図」アプリを開き、机や膝の上などにApple Watchをはめた腕を置く。逆の手の指をApple Watchのデジタルクラウンに当てると「30秒」のカウントダウンが始まる。

(2)計測が終了したら、Apple WatchをペアリングしているiPhoneに結果が送られる。心臓の拍動が正常なら[洞調律]に分類され、[心房細動]と表示されたら不規則な心拍が複数回確認されたことを意味する。

(3)心電図データはiPhoneの「ヘルスケア」アプリで管理する。心臓に関するセクションに、心電図計測で「起こり得る結果」、心電図に関して「知っておくべき4つのこと」、「心電図アプリの使い方」といった重要な情報を確認できる。

(4)心電図計測は診察と治療に役立てるための記録であり、ユーザの年齢や計測環境の情報などを加えた計測結果のデータを「ヘルスケア」アプリから直接PDFに書き出し、iOSの共有機能を使って医師に送信できる。