スティーブ・ジョブズはコンピュータを我々の心の自転車だと語り、マーシャル・マクルーハンは道具は人の身体の拡張だと語った。その人の集合体が社会だが、「テクノロジー社会」と呼ばれる今日の社会は、人々のどんな精神を拡張しているのだろうか。
私は、拡張の根っこは「資本主義」だと思う。特に「より多く売って、より多く儲ける」という考え方は20世紀初頭に多くの公害を生み出したが、それでもこの傾向が止まることはない。グローバル化が進んだ今日では、人気食材の世界的枯渇や修復不可能なレベルの環境破壊にまで拡大している。
本当にすべての事業が量を追求するのは正しいのか。
私は「時間を重ねるほど良質になること」が進化だと信じているが、資本主義による「量」の追求は多くの場合、むしろ退化、つまり「質」の低下につながっている気がする。量販店で売られている商品なども基本的には「OKな質のものを(尋常ではないほど)大量に」という姿勢だ。
悲しいかな「お金」が大事な資本主義では多くの消費者も安いことを重視し、そちらの商品ばかりが売れてしまう。その結果、良質を追求する事業が成り立たなくなってしまうことも多い。
もちろん、老舗ブランドなど良い挑戦を続ける人たちはいる。だが、若い企業の多くは経済的成功を最重視している。そんな中、最近、KATALOKOOOというサービスに勇気づけられた。
真剣に良いもの(主にファッションアイテムやアクセサリ)を追求し作っている。売り方が下手な職人たちを丁寧にキュレーションし、その良さを美しい写真と言葉で紹介し売っているサイトだが、見ているだけでファッション雑誌のページをめくっているようでウキウキしてくる。
お店に行かなくても、WEBブラウザの上でもショッピングのトキメキは味わえるんだと教えてくれた初めてのECサイトかもしれない。
と同時に、検索すればどんな商品でも出てきて便利な大手ECサイトがなんだがとても昭和なものに思えてきてしまった(もう平成も終わるというのに)。たしかに「便利」ではあるがトキメキがない(物欲的なウキウキはあるかもしれないが)。
聞けばこのサイト、良いものを作っているのに売り方を知らない作り手たち一人一人にとても丁寧に、魅力の伝え方を伝授し、WEB以外での露出の機会も与えたりと物凄い労力をかけているという(サイト運営者の良質なプロモーションへの熱量がハンパない)。
だが、果たして今の時代、良いものを買う人は本当にそんなにいるのだろうか。
実はそんな人たちをちょっとだけ勇気づけてくれる存在がアップルではないかと思う。アップル製品の多くは、ボタン1個を残すか減らすかやアップルペンシルの5ミリの断面にどれだけの機能を集約できるか膨大かつ丁寧な議論を重ねてものを作っている。しかも、製品のパッケージで使う紙や製造時に必要な電力まで自分たちでまかなう環境的にも優しい製造を行っている。そんなことを評価して製品を買ってくれる人はほとんどいないはずなのに。
そんな伝わりにくい丁寧な努力を重ねている会社が、世界でもっとも成功している会社だということは、良質なモノづくりを追求している人たちにとって、何かしら勇気を与える材料になるのではないかと思う。
もの溢れの現代、そろそろ「量」よりも「質」を評価する人が増えてくれれば、世の中はさらにステキになると信じたい。