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GoogleのJamboardで描く新しい“コラボ”のカタチ

著者: 大須賀淳

GoogleのJamboardで描く新しい“コラボ”のカタチ

さまざまなサービスで「働き方」を大きく変えてきたGoogleが、ゼロから設計したクラウド型デジタルホワイトボード「Jamboard」が日本に上陸した。従来のホワイトボードと比べてどこがすごいのか。Jamboardによってミーティングはどのように変わるのか。Google担当者に話を聞いた。

ゼロからデザイン

ミーティングの場に欠かせないアイテムのひとつである「ホワイトボード」。普段から何気なく使っているが、よくよく考えると何かと不便な点も多い。手描きしかできない、汚い字だと読みにくい、描いた内容の保存や共有、再現が難しい、使用後にきれいにしなければならない。時々マーカーがインク切れしていたりする…。

このデジタル全盛の時代において、不思議なほどなアナクロなまま残されていたホワイトボードという存在。「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」というミッションのもと、ビジネスの分野でも情報をデザインするグーグル。企業における生産性の向上や働き方改革を推進するために提供しているグループウェア「Gスイート(G Suite)」では、メールやビデオ会議、オンラインストレージ、ファイル共有などさまざまなツールを提供しているが、「最後の1ピース」として残っていたのが、このホワイトボードだった。そして、その打開策としてグーグルが2018年8月から発売開始したのが、クラウド型のコラボレーション用デジタルホワイトボード「ジャムボード(Jamboard)」である。

「ジャムボードは、従来のホワイトボードの単なる置き換えではありません。現在のビジネスにおけるホワイトボードの理想的なカタチとは何か。遠隔地にいる人も含めてスムースに作業するにはどうすれば良いのか。あらゆる角度から見つめ直し、いちからデザインした製品なのです」(Google Cloud ストラテジック アカウント スペシャリスト・武市憲司氏)

Jamboardは、55インチ型4Kディスプレイを搭載。キャスター付きで移動も容易な専用スタンドと組み合わせることでオフィス内の自由な場所で利用できる。電源以外のケーブルも不要。スタイリッシュさと機能性を兼ね備えた利用が可能だ。価格は、本体が64万円、スタンドが17万3000円のほか、G Suiteの年間ライセンス7万7000円が必要となる(いずれも税抜)。

Google Cloud ストラテジック アカウント スペシャリスト・武市憲司氏(左)と、Google Cloud セールス&チャネルリード・中田一成氏(右)。

デジタルの利点

ジャムボードは16点のマルチタッチに対応した55インチ型の4Kディスプレイである。その上に、専用のタッチペンや指で描くことができ、描画したものは専用の消しゴムや指で消すことができる。デジタルデータとして描き込まれるため、ドラッグやピンチ操作でオブジェクトの移動やサイズ変更なども可能だ。スマートフォンやタブレットに描く感覚で自然に使え、反応も良く、正確に描画することができる。

専用のタッチペンと消しゴムも優れている。デジタルデバイスに付きものの充電やペアリングといった面倒な操作が不要なパッシブ方式で、初めての人でも使い方に悩むことはない。

「従来のホワイトボードを使った際のストレスをなくしたいと思っていましたので、ペアリングも電池も不要です。耐久性にも優れていて、長くお使いいただけます」(Google Cloud セールス&チャネルリード・中田一成氏)

また、デジタルならではの特徴として、手書きした文字を認識してフォントへ変換してくれたり、図形を自動で整形してくれたり、描いた内容に合わせたイラストを呼び出したりすることもできる。従来のホワイトボードでは記録したものをあとから見ると非常に読みにくい場合も少なくない。しかし、ジャムボードに描いた内容は清書しなくともあとで資料として活用できる。

こうして描かれた?資料?の保存や共有もスマートに行える。ジャムボードは「Gスイート(G Suite)」との併用が基本となっており、描画した内容は常にGスイートのオンラインストレージに保存される。つまり、後のミーティングでもすぐに開いて使うことができるほか、PDF形式で参加者にメール送信することも可能だ。

本体背面には、電源ポートとHDMI、USB、光デジタル音声出力、イーサネットポートがある。

快適操作のカギとなるのが専用のタッチペンと消しゴム。実際のペンのようなインク切れや手に汚れが付くことがなく、電源不要のパッシブ方式のため充電やペアリングといったデジタル特有の面倒さも皆無。

情報は活用すべき

そして、ここからが「デジタル生まれ」のジャムボードの真骨頂だ。まず、ジャムボードはインターネットに接続できるため、ストレージ上の書類や画像はもちろん、グーグルの検索結果やグーグル マップの地図、そして任意のWEBサイトに至るまで、スクリーン上に自由な位置・サイズで貼り付けることができる。デジタルコンテンツを一緒に表示しながら、描画して説明できるのは実に便利。ミーティングが効率化するだけでなく、アウトプットの質も高めることができる。

また、クラウドを利用したコラボレーションにも長けている。企業のグローバル化や社内の働き方改革が進む中、現在の会議は?その場にいる人だけ?で行うものではない。遠隔地にいる人と、ネット経由でビデオや音声でやりとりするオンラインミーティングも盛んに行われる。

そうした状況を踏まえ、ジャムボードにはブラウザや専用のiOSアプリ/アンドロイドアプリが用意されており、ビデオ通話や音声通話が行える「グーグル ハングアウト」と連携して遠隔地からも参加できるようになっている。ジャムボードを参照し、書き込んだりもできるため、まさに遠隔地にいても音楽のジャムセッション(即興による合奏)のように、時間だけでなく感覚まで共有することができるのだ。ジャムボードが加わることで、これからのオンラインミーティングのカタチが根本的に変わっていくかもしれない。

このように、ホワイトボードをリデザインし、さまざまな新しい魅力を備えたジャムボードは、海外ではすでにスポッティファイ(Spotify)やネットフリックス(Netflix)といった著名な企業にも導入されている。

「ジャムボードは、従来のホワイトボードがそうであるように、決まった使い方に特化してはいません。それぞれの現場に合わせて、さまざまな活用方法があると思います」(武市氏)

真っ白な画面に何を描くか。それはデジタルホワイトボードになっても変わることはない。今の時代に大切なのは、それをどのように描き、どう使うかだ。「ビジネスにおいて仕事は複数名で行うものであり、情報は保存するものではなく活用することが重要」。武市氏に見せてもらったジャムボードの説明資料には、そんな言葉が書かれていた。

さて、皆さんの会社で今、ホワイトボードはどのように活用されているだろうか。そして、それと比較してジャムボードを実際に使って活用している姿を想像してみてほしい。そうすれば、いかにジャムボードが新しい可能性を秘めたツールであるかが“遠隔地”からでも実感してもらえるだろう。

手書きした文字は即座に認識され、フォントへと置き換えられる。そのほか、ラフに描いた図形が自動で整形されるのに加え、たとえば「猫っぽいイラスト」を書くだけでクリップアートに置き換えられるといったユニークな機能もある。

ボード上には文字や図形・イラストのほか、写真、Google マップの地図、WEBサイトなどを、任意の位置・サイズで貼り付けることが可能。完全なデジタルの領域であっても、ホワイトボード上の自由さがそのまま再現されている。

Jamboard上のセッションには、遠隔地からもネット経由でブラウザ、もしくはiOS/Androidアプリ上から参加することができる。ただ画面を表示するだけでなく、リモートの参加者も書き込みや貼り付けなどが自由に行え、他の端末上にもほぼリアルタイムで反映される。オンラインミーティングが苦手とした「感覚の共有」が新しい領域に進化した印象だ。