近年、携帯キャリアのオンライン専用プランや海外旅行時の通信手段として急速に普及している「eSIM(イーシム)」。 iPhoneはいち早くこの技術に対応してきましたが、「失敗すると通信できなくなりそうで不安」「設定が難しそう」「機種変更のたびに面倒なのでは?」と導入を迷っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、iPhoneにおけるeSIMの仕組みから設定方法、登録できる数、機種変更時に失敗しない移行方法までを、わかりやすく解説します。また、機種変更時に役立つ「eSIMクイック転送」にも触れながら、eSIMを安心して使いこなすためのポイントを紹介します。
iPhoneのeSIMとは
iPhoneのeSIMとは、従来のようにSIMカードを本体に差し込むのではなく、「本体に内蔵されたチップに、インターネット経由で通信契約情報を書き込む仕組み」のことです。
物理的なカードの配送を待つ必要がないため、自宅にいながらオンラインで契約し、その場ですぐに回線を追加・変更できる点が最大の特徴です。
現在、国内で販売されているiPhone(iPhone XS/XR以降、iPhone SEは第2世代以降)はすべてeSIMに対応しており、国内主要キャリアも標準でサポートしています。
eSIM対応モデル(日本国内販売モデル)
| シリーズ / モデル |
|---|
| iPhone 17 / iPhone Air |
| iPhone 16 / 15 / 14 / 13 シリーズ |
| iPhone 12 / 11 シリーズ |
| iPhone XS / XS Max / XR |
| iPhone SE(第2世代・第3世代) |
物理SIMとeSIMの違い
両者の機能(通話や通信を行う)に違いはありませんが、その管理方法が異なります。
物理SIM(ナノSIM)
カード型。契約情報がICチップに保存されており、機種変更時は差し替える。
eSIM
内蔵型(埋め込み型)。契約者情報は「プロファイル」というデジタルデータとして保存され、転送や再ダウンロードで移行する。
ひと目でわかる 物理SIMとeSIMの違い
| 特徴 | 物理SIM | eSIM |
|---|---|---|
| 形状 | 小さなICチップカード | なし(デジタルデータとして端末に保存) |
| 開通までの時間 | SIMカードの配送が必要な場合がある(数日かかることが多い) | オンライン手続きで即日開通できる場合がある |
| 紛失リスク | あり(カードの紛失・破損の可能性) | なし(物理カードが存在しない) |
| 差し替え | ピンを使って手動で入れ替える | 設定画面から切り替えるだけ |

eSIMが注目されている理由
なぜ今、多くのiPhoneユーザーが物理SIMからeSIMへ切り替えているのでしょうか。
即日開通が可能
SIMカードの到着を待たず、オンライン手続きだけで開通できる場合があります。「今すぐ乗り換えたい」「月末ギリギリに契約したい」というニーズに応えられます。
紛失や破損の心配がない
そもそもカードが存在しないため、紛失トラブルや接触不良が起きません。
機種変更時のデジタル移行が可能
後述する「クイック転送」を使えば、iPhone同士で簡単に契約情報を移せます。
参考元:eSIMとは?メリット・デメリットや対応機種、利用をはじめる手順を紹介
iPhoneでeSIMは何個まで使えるのか
結論から言うと、iPhoneには複数のeSIMを保存できますが、同時に使える回線は2つまでです。この点を理解しておくことが、eSIMを正しく使いこなすうえでもっとも重要なポイントになります。「いくつまで登録できるのか」と「いま実際に使えるのはいくつなのか」は意味が異なるため、混同しないようにしましょう。
登録できるeSIMの数
iPhoneには、複数のeSIMプロファイルを保存しておくことが可能です。
目安としては8個以上とされることが多く、機種やiOSのバージョンによってはそれ以上登録できる場合もあります。
たとえば、次のような回線を1台のiPhoneの中にストックしておくことができます。
・仕事用回線
・プライベート用回線
・家族や実家用の連絡回線
・海外旅行用eSIM(アジア向け)
・海外旅行用eSIM(ヨーロッパ向け)
必要に応じて、これらを切り替えながら使えるのがeSIMの大きな利点です。
同時に使える回線は2つまで
保存しているeSIMが何個あっても、同時に「オン(有効)」にできる回線は最大で2つまでです。
・物理SIM 1枚 + eSIM 1つ
・eSIM + eSIM(iPhone 13シリーズ以降、およびiPhone SE 第3世代)
この状態が、一般に「デュアルSIM運用」と呼ばれます。3つ目以降のeSIMを使いたい場合は、現在オンになっている回線のどちらかをオフにし、使いたい回線をオンに切り替える操作が必要になります。
参考元:eSIMでデュアルSIMを活用する – Apple サポート (日本)


なぜ2回線までなのか
なお、iPhoneでは複数のeSIMを端末内に保存できますが、同時に利用できる回線は最大2回線までです。
例えば、「物理SIM+eSIM」または「eSIM+eSIM」といった形でデュアルSIMとして利用できます。ただし、モバイルデータ通信を同時に使用できる回線は1つだけで、もう1回線は主に音声通話やSMSの待ち受けとして利用されます。
iPhoneのeSIMでできる代表的な使い方
物理SIMからeSIMへ切り替える
現在使っている物理SIMをeSIMに変更することで、SIMカードスロットを空けることができます。これにより、SIMカードの抜き差しが不要になり、物理カードまわりのトラブルを減らせます。また、海外で現地の物理SIMを使いたい場合に備えることができます。
eSIMを追加して2回線運用する

もっともポピュラーな使い方がこれです。メイン回線はそのままに、サブ回線としてeSIMを追加することで、1台のiPhoneで「仕事とプライベートの番号を分ける」「通話用とデータ通信用でキャリアを使い分ける」といったデュアルSIM運用が実現します。
海外用eSIMを一時的に使う
海外旅行の際、Wi-Fiルーターをレンタルする代わりに、渡航先で使える「プリペイド型eSIM」を購入して追加します。普段の日本の番号は着信可能な状態で残しつつ、データ通信だけ現地の安い回線を使う、といった高度な使い方ができます。

iPhoneでeSIMを設定する方法
キャリアによって細かな画面表示や手順は異なりますが、eSIM設定の大まかな流れはどこも共通しています。まずは全体像を把握しておくと、初めてでも迷わず進められます。
iPhoneでのeSIM設定の基本的な流れ
手順1:キャリアでeSIMを申し込む
手順2:eSIMプロファイルをiPhoneに追加する
手順3:回線の切り替え設定を行う(デュアルSIMの場合)
この3ステップを押さえておけば、eSIMの設定はスムーズに進められます。
手順1:キャリアでeSIMを申し込む
各通信会社の公式サイトや専用アプリから、eSIMで回線を申し込みます。本人確認(eKYC)もスマホのカメラで完結するケースが多く、店舗に行かずに手続きできるのが特徴です。
手順2:eSIMプロファイルをダウンロードする
審査が完了すると、メールやアプリで設定方法の案内が届きます。多くの場合はQRコードを使って登録します。
- キャリアから提示された「QRコード」を用意する(PCやiPadに表示する、または紙に印刷する)
- iPhoneの「設定」>「モバイル通信」>「eSIMを追加」をタップ
- カメラが起動するのでQRコードを読み取る
※最近では、QRコードを使わず、キャリアの専用アプリからボタン一つで自動設定できるサービス(楽天モバイルやpovo2.0など)も増えています。
以下のように、eSIMプロファイルをダウンロードしてアクティベートするだけで完了します。


手順3:回線の切り替え設定(デュアルSIM利用時)
2回線目としてeSIMを追加した場合、
・モバイルデータ通信に使う回線
・デフォルトの音声通話に使う回線
をどちらにするか選択する画面が表示されます。「通話はメイン回線」「データ通信はサブ回線」といったように、用途に合わせて設定すれば完了です。


登録時の注意点
・Wi-Fi接続必須:プロファイルのダウンロードにはインターネット環境が必要です。
・iOSは最新に:iOSのバージョンが古いと設定メニューが異なったり、エラーが出たりすることがあります。
・旧プロファイルが残っていないか確認:格安SIM(MVNO)等を利用していた場合、別途インストールしていた「APN構成プロファイル」が残っていると、新しいeSIMの通信を阻害することがあります。 「設定」>「一般」>「VPNとデバイス管理」を確認し、不要なプロファイルがあれば削除してください。


参考元:APN構成プロファイルの削除方法を教えてください:IIJmio Q&A
eSIMクイック転送とは
「eSIMクイック転送」は、近くにあるiPhone同士でBluetoothなどを使ってeSIMの契約情報を直接転送できる機能です。対応する通信事業者のeSIMを利用している場合、QRコードの再読み込みなどを行わなくても、新しいiPhoneに回線を移行できます。
利用するには、古いiPhoneと新しいiPhoneの両方にiOS 18.4以降がインストールされている必要があります。また、通信事業者によってはeSIMクイック転送に対応していない場合もあるため、その場合はQRコードによる再設定などの手続きが必要になります。

できること
・旧iPhone → 新iPhoneへeSIM移行: 機種変更時の引き継ぎが数タップで終わります。
・物理SIM → eSIM化:今入っている物理SIMを、その場でeSIMに変換してしまうことも可能です(対応キャリアのみ)。
使えないケース
・通信事業者側がクイック転送に対応していない場合(IIJmio、mineo、日本通信SIM、OCN モバイル ONE、イオンモバイルなど一部のMVNO)。
・転送元のiPhoneの機種やiOSバージョンが古い場合。
・BluetoothやWi-Fiがオフになっている場合。
※利用可否や必要なiOSバージョンは、通信事業者や契約内容によって異なる場合があります。
機種変更時のeSIM移行で失敗しないために
クイック転送が使える場合
ドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルなどの主要キャリア、あるいはワイモバイル、LINEMO、UQ mobileなどのサブブランドを使っている場合は、eSIMのクイック転送に対応しています。その場合、iPhoneの初期設定時(クイックスタート中)などからeSIMクイック転送を使うのが最も簡単で安全です。
クイック転送の手順(新しいiPhoneの初期設定中の場合)





初期設定を終えたあとでも、eSIMのクイック転送は可能です。「設定」アプリを開き、「モバイル通信」>「eSIMを追加」をタップします。すると、手順❷で紹介した「電話番号を転送」画面が表示されるので、あとは初期設定中と同じ流れでeSIMを転送できます。
通信事業者サイトで再発行する場合
クイック転送非対応の格安SIMなどの場合は、各社のマイページにログインし、「eSIM再発行」の手続きを行う必要があります。再発行された新しいQRコードを新端末で読み込むことで移行完了となります。
物理SIMよりeSIMが不利になる場面
物理SIMであればカードを差し替えるだけで一瞬で機種変更が終わりますが、eSIM(特にクイック転送非対応の場合)は再発行の手間や手数料がかかることがあります。 「気分に合わせて頻繁にスマホを変える」というガジェット好きの方にとっては、物理SIMの方が手軽な場合もあります。
参考元:mineo:eSIM変更・再発行
eSIMとデュアルSIMの関係
記事の最後になりますが、混乱しやすい2つの用語を整理しておきましょう。
デュアルSIMとは何を指すのか
「デュアルSIM」とは、SIMの形状のことではなく、「1台のスマホで2つの回線を同時に有効にしている状態(機能)」のことを指します。

eSIMを使うとデュアルSIMが実現しやすくなる
iPhoneには物理SIMカードが入るスロットは(日本版の場合)1つしかありません。そのため、iPhoneでデュアルSIMを実現するには、必然的に「少なくとも1つはeSIMを使う」必要があります。
代表的な組み合わせ
・物理SIM + eSIM:もっとも一般的な組み合わせ。
・eSIM + eSIM(デュアルeSIM):iPhone 13シリーズ以降、およびiPhone SE(第3世代)で使用可能。物理スロットを使わない完全デジタルな運用。
参考元:Apple サポート:eSIMでデュアルSIMを活用する
eSIM利用時のメリットと注意点
メリット
・即日開通:思い立ったらすぐに契約・利用開始できる。
・海外利用が簡単:レンタルWi-Fiや現地SIM売り場へ行く手間が不要。
・SIM差し替え不要:小さなカードを紛失するリスクからの解放。
注意点
・バッテリー消費増:デュアルSIM運用時は、常に2つの電波を探すため多少バッテリー消費が増える。
・機種変更時の移行手続き:物理SIMの差し替えよりは手順(再発行や転送)が必要。
・キャリア制限の有無:一部の古いプランやMVNOではeSIM未対応の場合がある。
まとめ
iPhoneのeSIMは、単なる「SIMカードの代替」ではありません。 それは、私たちの通信環境を物理的な制約から解放し、回線の追加・切り替え・移行を驚くほど柔軟にする仕組みとして設計されています。
設定手順だけを覚えるのではなく、「iPhoneには複数のeSIMを保存できる」「必要なときに切り替えて使える」という本質を理解することで、通信障害への備えや海外旅行、仕事とプライベートの両立など、iPhoneのポテンシャルを最大限に引き出せるようになるはずです。

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