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トヨタ自動車の“変革”を支える「DIG」メンバーが語る“Macの価値”【Macがビジネスに最適な理由】

トヨタ自動車の“変革”を支える「DIG」メンバーが語る“Macの価値”【Macがビジネスに最適な理由】

トヨタ自動車デジタル変革推進部「DIG」のメンバー。写真右下より時計回りで前田公志氏、松原佑樹氏、中村拓也氏、古賀史苑氏、庄子優太氏。  Photo●藤代誉士

自動車産業はいま、名実ともに「百年に一度の大変革期」を迎えている。トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)は、この変革の中で新たなモビリティ産業の実現を目指し、2021年1月に「デジタル変革推進室(以下、デジ変)」を発足した。

デジ変は同年10月、顧客や従業員が使うソフトウェアを内製でアジャイル開発する全社施策として「Digital Innovation Garage(以下、DIG:ディグ)」を立ち上げ、トヨタ各部門や関連会社から、強い意欲を持ち、プログラミング基礎の受講結果が優良で、デジ変への異動が承認されたメンバーが結集した。そのDIGの内製開発に欠かせない道具として選ばれたのがMacである。

 Mac導入の舞台裏

デジ変では、「お客様毎(ごと)に、最適なタイミング毎(ごと)に、感動的な良い体験(コト)をたくさん提供すること(略称『GGK』)」が、次の百年も地球・社会・お客様から選ばれ続け、トヨタグループの原点である「産業報国」を今後も継続できると考えている。

これまでトヨタ社内のソフトウェア開発といえば、自動車の電子部品を制御する組込み系を想起するのが一般的だった。しかし近年は、顧客向けのWebサイトやスマホアプリ開発のニーズが高まっている。人々の関心やビジネスが“モノ”から“コト”へ変化しており、無形のサービスや体験の重要性は一段と増しているからである。

トヨタの「GGK」を実現するには、内製開発をリードできるプロダクトマネージャー、プロダクトデザイナー、アプリ開発エンジニアの育成が欠かせない。そのため、多くの開発ツールを同時に起動しても快適に使えるMacBook Proが選ばれたのは自然な流れだ。

次の百年も産業報国し続けるための必須要素(生成AIを含む広義のデータサイエンス、ソフトウェア、内製アジャイル、デザイン、自律自走型人財)のうち、現在のDIGの取り組みは4つをカバーしている。近い将来、データサイエンスも含め5つをカバーしていく。
次の百年も産業報国し続けるための必須要素(生成AIを含む広義のデータサイエンス、ソフトウェア、内製アジャイル、デザイン、自律自走型人財)のうち、現在のDIGの取り組みは4つをカバーしている。近い将来、データサイエンスも含め5つをカバーしていく。

2025年8月現在、DIGメンバーには社員が使っているWindows PCとは別に、AppleシリコンのM4チップと48GBメモリを搭載したMacBook Proが支給されている。「会社から支給されていた標準スペックのPCでは、最新のデザインツールを動かすことが困難でした」と語るのは中村拓也氏(DIGのプロダクトデザイナー)。

同じくプロダクトデザイナーの前田公志氏も、「以前の部署で使っていたPCの速度は普通だと思っていましたが、Macを使うようになって初めて“これまでのPCはとても遅かった”と気づきました」とMac導入による変化を振り返る。

直感的なUIや操作をはじめとするUXにおいても、Macの優位性は際立つ。「これまで使っていたノートPCではマウスを使うのが当たり前でしたが、Macならトラックパッドだけで快適に操作できます」と庄子優太氏(DIGのアプリ開発エンジニア)。

さらに、ソフトウェア開発環境におけるMacのアドバンテージは決定的だ。「iOSネイティブアプリの開発にはプログラミング言語の『Swift』が必須です。一方でAndroidアプリの開発には『Kotlin』を用いますが、Macなら1台で両方のプラットフォームの開発が行えます」と古賀史苑氏(DIGのアプリ開発エンジニア)。

加えて、世の中のプログラミング関連の情報やナレッジの多くがMac前提で書かれていることや、エンジニアが2人1組となるペアプログラミングの際にキー配列を再起動なしで切り替えられることなど、アプリ開発者視点での利点は数えきれないという。

「MacはデバイスとOSが統合的に設計されているため、どのモデルを選んでも品質や性能のばらつきが少なく安心です。従来のPCは選択肢こそ多いものの、安価なモデルを選ぶと自身の期待とギャップが生まれがちですが、Macにはそうした“期待ハズレ”が生まれにくいです」と松原佑樹氏(DIGのプロダクトマネージャー)。




 DIGが行っている人財育成

DIGは、局所プロセス改善ではない、複数の工程を大横断してプロセスを抜本的に変革する「デジタライゼーション」や、その先の「トランスフォーメーションwith デジタル」実現のために立ち上げたことから、次のような3ステップ構造になっている。

DIGの建て付けとしては、3ステップ構造になっている。
DIGの建て付けとしては、3ステップ構造になっている。

まずはソフトウェア開発の素養がある“人財”をトヨタグループ内から発掘するため、現在の業務と並行して履修できる「DIGカレッジによるリスキリング[ステップ1]」からスタートし、4.5時間のプログラミング入門講座と60時間の基礎講座を通じて、自ら考えて学ぶ力(自走力)を養う。

DIGカレッジでの受講結果が優良で、上司の承認を得たメンバーは約3カ月にわたる「ブートキャンプ」のポジション別トレーニングに進むことができる。基礎講座だけでも相応の力がつくので、すでにDIGカレッジ卒業者が各部署で優秀な「市民開発者」として活躍している。

次に「プロレベルの専任アジャイル開発[ステップ2]」。世の中で「リーンXP(アジャイル手法の一つ)」でシステム開発している事業者と同じやり方のプロダクト開発を通じた人財育成。開発経験を積んだメンバーが、後から加わるメンバーに知識やノウハウを継承しながら連綿と育成が続く仕組みだ。2025年現在、20チーム約200名で、プロダクトマネージャー、プロダクトデザイナー、アプリ開発エンジニアで1チーム基本8名で構成されている。

最後に「デジタライゼーションへの挑戦[ステップ3]」。プロに外注しても成し得ない、DIG(内製リスキリングメンバー)だからこそ成せる高度なデジタルソリューション開発による大変革と、それを通じた人財育成だ。

トヨタのデジタル化の定義は、①+②+③の総和である。次の百年も創業理念である産業報国を続けるための会社変革を「トランスフォーメーションwithデジタル」として、お客様への提供価値が変わることを「DX」と位置付けている。DIGでは、これを実現するための人財を育成している。
トヨタのデジタル化の定義は、①+②+③の総和である。次の百年も創業理念である産業報国を続けるための会社変革を「トランスフォーメーションwithデジタル」として、お客様への提供価値が変わることを「DX」と位置付けている。DIGでは、これを実現するための人財を育成している。

トヨタに限らず日本の多くの大企業が、次の百年も地球・社会・お客様から必要とされ、経済発展に貢献し続けるには、DIGが行っている人財育成の取り組みは本質を捉えている。その挑戦を支えるパートナーとして、Macは単なるツールを超えた存在となっている。

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著者プロフィール

栗原亮(Arkhē)

栗原亮(Arkhē)

合同会社アルケー代表。1975年東京都日野市生まれ、日本大学大学院文学研究科修士課程修了(哲学)。 出版社勤務を経て、2002年よりフリーランスの編集者兼ライターとして活動を開始。 主にApple社のMac、iPhone、iPadに関する記事を各メディアで執筆。 本誌『Mac Fan』でも「MacBook裏メニュー」「Macの媚薬」などを連載中。

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