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Mac用写真編集アプリの元祖「Digital Darkroom」。Photoshopに先んじた先駆的グラフィックツール

著者: 大谷和利

Mac用写真編集アプリの元祖「Digital Darkroom」。Photoshopに先んじた先駆的グラフィックツール

グレースケールフォトエディタ「Digital Darkroom」

今でこそ「Adobe Photoshop」は、ハイエンドの写真編集アプリとして定番的な存在だが、実はそれに先駆けて、その名も「Digital Darkroom(デジタル暗室)」という名のグラフィックツールが存在していた。

厳密には、どちらのアプリも開発されたのは1987年だったが、最初期のPhotoshopが商業レベルで販売されたのが1988年であったのに対し、Digital Darkroomは最初から当時の有名ソフトハウスのSilicon Beach Softwareからリリースされたため、筆者にとっても最初の写真編集アプリとしての印象が強く残っている。

これらの写真編集アプリが1987年に開発された背景には、同年に発表された「Macintosh Ⅱ」の存在が大きかったといえる。それまでのMacは2値のモノクロディスプレイしか備えていなかったのに対して、Macintosh Ⅱは拡張スロットに装着するビデオカードの種類によって、たとえば8ビットのカードであれば、約1670万色から任意の256色の表示が可能となった。

それでもフルカラーの写真表示には色数が不足するが、グレースケールに割り当てると256階調となり、白黒写真であれば十分に表現できる。そこでDigital Darkroomも、単に“Display”と呼ばれた最初期のPhotoshopも、グレースケールイメージ専用の写真編集アプリとして開発されたのである。




革新的なプラグインとマジックワンド

Digital Darkroomの革新性を象徴し、Photoshopにも大きな影響を与えた仕様として「プラグイン(plug-in)」と「マジックワンド(Magic Wand)」がある。

ご存じのようにプラグインは、アプリ本体に対して後から選択的に機能モジュールを追加できる仕組みを指すが、まさにDigital Darkroomこそがその先駆けとなったMacアプリで、プラグインという用語自体、このアプリの開発者による命名だった。

また、マジックワンドは似たような色や階調の領域を選択する場合に使われるツールだが、これもDigital Darkroomによって実現された進歩的な機能だった。

その意味では、Digital Darkroomは写真編集ツールの原型を作り上げたといっても過言ではない。

しかし、DTPアプリの「Aldus Page Maker」で知られたAldus Corporationが1990年にSilicon Beach Softwareを買収したのち、Digital Darkroomはカラー化されることなく放置されることとなってしまう。

さらに1994年にAldus自体もAdobeに買収されたことで表舞台から姿を消し、そこからAdobe一強時代への助走が始まっていったのである。

※この記事は『Mac Fan』2025年1月号に掲載されたものです。

著者プロフィール

大谷和利

大谷和利

1958年東京都生まれ。テクノロジーライター、私設アップル・エバンジェリスト、神保町AssistOn(www.assiston.co.jp)取締役。スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツへのインタビューを含むコンピュータ専門誌への執筆をはじめ、企業のデザイン部門の取材、製品企画のコンサルティングを行っている。

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