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Macらしい「ショートカット」の活用法 – Mac活用“ワンランクアップ”講座 第5回

著者: 海上忍

Macらしい「ショートカット」の活用法 – Mac活用“ワンランクアップ”講座 第5回

「ショートカット」はMacにもある!

2021年にリリースされたmacOS Monterey以降、macOSにはOCR機能が標準装備されています。しかも、翌年のmacOS Venturaからは日本語に対応し、「プレビュー」アプリでファイルを開き、マウスでドラッグするだけで、指定した範囲をテキストデータとして取り出せるようになりました。

スキャナで取り込んだものなど、テキストデータではなく画像データとして保存されている文書を扱うときに、とても重宝しますよね。

しかし、そのページ数が増えてくると…。これだけ便利になったにもかかわらず、ストレスを感じてしまいます。範囲指定すら面倒くさい、ワンクリックで全体を選択&コピーしたいと願ってしまうのですから、人間の欲深さを考えずにはいられません。

そこで利用したいのが「ショートカット」。初出はiPhoneアプリとしてiOS 12で、macOS版はmacOS Montreyのとき持ち込まれたアプリですが、機能的には遜色ないうえに、macOS版にはiOS版にない機能も。今回は、その点に着目して“Macらしいショートカットの活用法”を探ってみましょう。




活用のポイントは「クリップボード」

iOS版とmacOS版の「ショートカット」アプリは、基本的には互換性があります。同一のApple Accountでサインインしていれば、作成済のショートカットはiCloudを経由して自動的に同期され、常に同じショートカットを実行できる状態になります。

ただし、使いものになるかどうかはショートカット次第です。たとえば、iPhoneで作成されたショートカットにiOS版しか存在しないアプリのアクションが利用されていると、そのショートカットは動作しません。

基本的にアクションはアプリと紐づいているため、対応するアプリがインストールされていなければ実行できないのです。だから逆もまた然りで、ターミナルに紐づけられたアクションを含むショートカットはiPhoneでは動作しません。

同じアクションでもMacで動かしたほうが扱いやすい、というケースもあります。クリップボードはその典型かもしれません。たとえば、実行結果をクリップボードにコピーするショートカットは、iPhoneでも実行可能ではあるものの、Macで実行したほうが活用の幅が広がります。

Macらしい「ショートカット」の活用法-1
macOS版「ショートカット」アプリはiOS版と互換性があるものの、どちらか一方にしか存在しないアプリのアクションは使えません。

macOS版「ショートカット」はココが違う

例として、以下に挙げるショートカットを見てみましょう。

新聞や雑誌を撮影したJPEG画像のように、文字がテキストデータではなく画像データとして残されている場合、「画像からテキストを抽出」アクションを利用すると、画像ファイルからテキストデータを取り出すことができます。このアクションはmacOS/iOSどちらでも動作しますが、macOSのほうがユニークな使い方ができるのです。

この作例では、取り出されたテキストデータはクリップボードに位置時保存されるため、適当なアプリ(で開いている書類)にペーストしなければなりません。iPhoneの場合、「メモ」や「Pages」にペーストすることになるでしょう。

しかしmacOSには、ターミナルとshortcutsコマンドがあります。ターミナルからshortcutsコマンドを実行してショートカットを実行すれば、実行結果を直接ファイルに書き出すこともできてしまいます。

まずは「ターミナル」を起動し、以下のコマンドラインを実行してみましょう。現在、「ショートカット」アプリから呼び出せるショートカットの一覧が表示されます。

Macらしい「ショートカット」の活用法-2
ショートカットの作例「画像からテキスト抽出」。
Macらしい「ショートカット」の活用法-3
「shortcuts list」の実行結果。

次に、サブコマンド「run」と呼び出すショートカットを引数としてshortcutsコマンドを実行します。ここでは「画像からテキスト抽出」という名前のショートカットを呼び出すため、以下のとおりになります。

あとはふだんどおり、ダイアログの指示に従いショートカットを進めていきますが、iOSで実行するときとの決定的な違いは「Macであれば結果をクリップボードに保存できるし、直接テキストファイルに書き出せる」ということです。たとえば、以下の要領で「リダイレクト」という方法を使えば、画像から抽出したテキストを「kekka.txt」というファイルに保存できます。

「パイプ」という方法を使い、実行結果を「wc」コマンドに引き渡せば、抽出された文字数を数えることも可能です。かんたんに説明すると、shortcutsコマンドは実行結果を「標準出力」へアウトプットし、wcコマンドは「標準入力」から受け取ったテキストデータに含まれる文字を数えたのです。

リダイレクトにパイプ、標準出力に標準入力…UNIXに慣れない方には呪文のように聞こえるかもしれませんが、shortcutsコマンドをより高度に活用するには不可欠の機能です。

次回は、これらUNIX由来の機能を使い、コマンドのように使える実用的なショートカットの作成術を紹介します。

Macらしい「ショートカット」の活用法-4
撮影した書籍の奥付け(ただいま絶賛絶版中!)。数えたところ282文字でした。
このとおり、正確に文字数をカウントできました(確認のため、抽出したテキストをpbpasteコマンドで表示しています)。




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著者プロフィール

海上忍

海上忍

IT/AVコラムニスト。UNIX系OSやスマートフォンに関する連載・著作多数。テクニカルな記事を手がける一方、エントリ層向けの柔らかいコラムも好み執筆する。執筆以外では、オーディオ特化型Raspberry Pi向けLinuxディストリビューションの開発に情熱を注いでいる。2012年よりAV機器アワード「VGP」審査員。

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