かつてはデザイナーやエンジニアが主に使用しているイメージの強かったApple製品。今では企業や組織、教育機関においても業務用デバイスとして広く導入されるようになりました。こうした時代の変化の中で、2002年の創業以来「Appleファースト」の理念を貫き、その変化を支えてきたのがJamfです。
JamfはApple製品に特化した管理・セキュリティソリューションを展開しており、その大きな強みはAppleエコシステムとの高い親和性にあります。すでに世界中のIT管理者から高い信頼を獲得し、MacやiPhone、iPadの大規模導入・運用を支える存在となっています。
そのJamfのソリューションを直接体験できるリアルイベント「Jamf Nation Live Tokyo 2025」が、2025年8月8日にTODAホール&カンファレンス東京で開催されました。
本イベントでは、企業や教育機関のIT管理者などを対象に、最新のソリューションやAppleデバイスの管理・運用におけるベストプラクティス、さらにセキュリティ対策に関する情報を、多様なテーマのセッションを通じて提供しました。また、参加者同士やJamfスタッフとの交流を深める機会もあり、ハンズオンコーナーが設けられたほか、懇親会なども行われました。
東京での開催は今回で3回目。会場を埋め尽くす参加者の熱気の中、テーマ別セッションの模様やJamfユーザ同士の交流の様子をレポートします。
「Go Further」。選択と集中で現場に最適な体験を
「Jamf Nation Live Tokyo 2025」のテーマは「Go Further(もっと先へ)」。

基調講演の冒頭では、日本通でもあり、ウィスキーの”響”が大好きだというJamf CEOのジョン・ストローザル(John Strosahl)さんがビデオメッセージで登場。Jamfの製品戦略や、日本市場におけるAppleデバイス管理・セキュリティソリューションの重要性を語りました。
また、パートナーとの連携強化や顧客ニーズへの迅速な対応を強調し、今後も現場の声を反映したサービスを提供していくと表明。「次回は日本で直接交流したい」と意欲を示し、参加者への感謝と期待を込めてメッセージを締めくくりました。

続いて、来日したCCO(Cheif Customer Officer)のサミュエル・ジョンソン(Samuel Johnson)さんは、今年のJamfのテーマとして掲げる「Go Further(もっと先へ)」が、IT管理者と利用者双方のニーズを正しく理解して最適化した体験を提供していくことにあると述べました。
さらに、Jamf Japanカントリーマネージャーの岡 学さんは、Apple製品を安心して活用できる環境を提供してきた23年の歩みを振り返りつつ、近年の高度なIT環境に合わせて複雑化していたJamf製品のポートフォリオを整理し、利用者のニーズに最適化するための「選択と集中」の方針を表明。従来は別々に扱われがちだったデバイス管理とセキュリティを「同じ基盤」で運用できることのメリットを強調しました。

Jamf製品のパッケージにおいても、企業向け「Jamf for Mac」、モバイル活用を支援する「Jamf for Mobile」、教育機関向け「Jamf for K-12」を当面の3本柱として展開。いずれもデバイス構成の配付・可視化・対策や修復といった運用プロセスを一本化することで、よりシンプルで確実な運用を目指すという力強いメッセージが伝えられました。

IT管理者が注目するJamfの新機能
さらに、2025年6月に刷新された注目の新機能として、「AIアシスタント」による効率的なサポート、Appleデバイス側で設定を自律的に維持できる宣言型デバイス管理(DDM)に対応した「ブループリント」、デバイス管理とセキュリティを一体的に可視化するポータル「Self Service+(セルフサービスプラス)」、従来のVPNなどに依存せず安全なアクセスを可能にする「ネットワークリレー」の4つを紹介。
これらの新機能は、ユーザ側の待機時間やIT部門での“やり直し”の手間を大幅に減らし、デバイス導入時の展開から日常的な運用まで、一連の業務負荷を軽減できると説明しました。

モバイルDXの実現に必要なセキュリティ
基調講演に続く「モバイルDX」をテーマとしたセッションでは、企業のDX推進においてスマートフォンが不可欠な業務ツールとなった一方で、PCと同等のセキュリティ対策が施されていないケースが多い現状を指摘。もしデータ侵害が発生した場合、最悪で1件あたり6〜7億円規模の損害につながる可能性があると警鐘が鳴らされました。
さらに、従業員の利用度合いによってはスマホ投資のROI(投資利益率)が半分しか回収できていない可能性があることにも言及。その背景には、従業員・IT部門・経営層の間に存在する意識のギャップがあること、そして意思決定の先送りによってリスクが増大していると分析しました。
こうした課題の解決策としてJamfが提供するのが「Jamf for Mobile」。これは「モバイルデバイス管理」「モバイル脅威防御」「ZTNA(ゼロトラストネットワークアクセス)」を統合したソリューションで、シンプルな導入プロセスによりiPhoneやAndroidを保護しつつ、ユーザの利便性を損なわない点が大きな強みとしています。

Windows PCとMacの混在環境でのデバイス管理の課題
企業におけるMacの業務利用が拡大する一方で、これまでWindows PCを中心に管理してきた企業からは「管理が難しい」「既存のセキュリティポリシーに適合できるのか」といった不安の声も少なくありません。未管理のMacを放置すれば、OSやソフトウェアの利用状況を把握できず、紛失時の対応も後手に回るなど、重大なリスクを抱えることになります。
こうした課題に対し、JamfはAppleデバイスに最適化された統合ソリューションを用意しています。Jamf Proはインベントリの可視化やアプリ配付を効率化し、Jamf Protectはエンドポイントセキュリティを強化。そしてJamf Connectはゼロトラストアクセスを実現します。さらに、IntuneやEntra IDといった既存システムとの連携によって、Windowsと同等の水準でMacのデバイス管理とセキュリティを実現できることが解説されました。

なお、Jamfの公式Webサイトでは、IT管理者が押さえておきたいMac導入の基本から応用までを網羅したeBook「企業のためのMacガイド」を配布しています。
Macがビジネスに適している理由や、最新のApple AI活用やゼロタッチ導入の実践、先進企業の導入事例を通して、いま知っておくべきベストプラクティスを理解するのに最適です。
そのほか、IT管理者や技術者を対象にしたセッションでは、業務用端末として普及が進むiPhoneの新たなリスクとして、USB-Cの採用や「スマホ新法」によるアプリのサイドローディングの話題が取り上げられました。Apple標準のセキュリティだけではカバーしきれない部分を補う存在として、Jamf for Mobileの価値が示された格好です。
企業と教育機関向けのセッションは立ち見も続出!
Jamf Nation Liveでは、ビジネス向けと教育機関向けに会場が分かれ、それぞれ個別相談会やゲストスピーカーを招いてのセッションが行われました。一般企業向けのセッション会場では、Jamf Proの導入で業務効率化だけでなく顧客体験の向上を達成した事例や、高いセキュリティを求められる金融分野でJamf Connect ZTNAを構築した過程などの事例、さらには、従業員が個人で所有するiPhoneやiPadをBYODで利用する方法や、病院におけるiPhoneのセキュアな運用方法などJamf Proを実際に活用している現場のノウハウなども紹介され、来場者の関心を集めました。



また、教育機関向けのセッション会場においても、端末台数の大規模化や教師の業務負荷といった学校現場のさまざまな課題に対してJamfのソリューションがどのように応えるのかが具体的に示され、立ち見が出るほどの盛況となりました。
文部科学省が推進する「校務DX」をテーマとした講演では、2025年に教員用端末として1849台のMacBook Airを導入した岐阜市教育委員会の事例を紹介。先生方からは「軽量で持ち運びやすい」「バッテリが長持ちで授業中も安心」「授業準備をどこでも行える」といった声が寄せられ、校務端末の概念を変える存在として高く評価されていることが紹介されました。
さらに、Macが校務で選ばれる理由を示すデモや、文科省ガイドラインに準拠したゼロトラスト構成をMacで実現する方法も披露。Macは単なる端末にとどまらず「教師の相棒」として、働き方改革や教育現場の創造性を支える存在であることが改めて示されました。

セッション会場以外でもユーザ同士の交流が深まる
セッション会場の外に設けられた展示スペースでも、終日にぎわいが続きました。そこではJamfの最新ソリューション紹介やスペシャリストへの個別相談ブース、Macのタッチ&トライコーナーなどが展開され、Jamfの販売・テクニカルパートナーによる業務・校務支援ソリューションのデモ展示や、登壇スピーカーとの交流コーナーも登場。単なる最新情報の収集にとどまらず、参加者同士の一体感を高め、交流を促す姿勢が随所に感じられる内容となっていました。


“先生のための”Jamfユーザグループがキックオフ!
「Jamf Nation Live Tokyo 2025」では、教育機関に特化したJamfのユーザグループ「Jamf Educators Japan」がキックオフしました。ADE(Apple Distinguished Educator)やJamf Educationの認定を受けるなど国内でApple製品とJamf導入をリードする先生方が登壇し、イベントの盛り上がりも最高潮に達しました。
トークセッションでは、東京都・利島村教育委員会 教育長の三室哲哉先生が、Macが教育現場にもたらす3つのメリットとして「iPadとの親和性やMacの使いやすさによる校務のストレス軽減」「長期にわたる安定したパフォーマンス」「Jamf活用によるトータルコスト削減」を挙げたほか、森村学園初等部 情報科の榎本昇先生は、iPad導入を決めた理由を「子どもたち自身がもっとも使いやすい端末だから」と説明。「自由な学び」を実現するために、JamfのMDM機能や「Jamf Parent」アプリを積極的に活用していることを実際のエピソードを交えながら紹介しました。
また、広島県瀬戸内高等学校・広島桜が丘高等学校でICTを担当するアンソニー・ダグラス(Anthony Douglas)先生は、合計2600台以上のデバイスを1人で管理する実例を紹介。「Jamf Connect」を用いてゼロトラストネットワークを構築し、異なる環境の2校でも利便性を損なわず安全なアクセスを実現しています。
セッション会場では先生方との質疑応答も活発に行われ、教育現場において生徒情報や校務データの保護が最優先であると同時に、教師がストレスなく利用できる環境づくりが不可欠だという意見が共感を呼びました。


JamfユーザグループにJamf本社エグゼクティブがゲスト参加!
Jamf管理者ユーザグループ「JMUG(Jamf Macadmin User Group)」によるライブトークセッション「JMUG Nation Live Tokyo」も大盛り上がり。
冒頭ではJMUGが6年前に発足し、四半期ごとに集まって活発な活動を続けていることが紹介され、オーティファイの中西匠さん、NOT A HOTELの白井麻由さん、アカツキの高良幸弘さんといった中心メンバーが登壇し、それぞれの現場におけるJamf活用事例を披露しました。
さらにセッション中には、Jamf本社からCCOのサミュエル・ジョンソンさん、副社長でグローバル技術支援部門を率いるリサ・エイカーソン(Lisa Akerson)さんがスペシャルゲストとして登場。Jamf製品の今後のビジョンが語られたほか、ユーザからの質問に直接答える場面もあり、本社エグゼクティブとの貴重な対話が実現しました。
最後に、製品の進化にはビジネスや教育現場からのフィードバックが欠かせないと強調され、ユーザと開発チームの橋渡し役としてJMUGの重要性が改めて確認されて「JMUG Nation Live Tokyo」は盛況のうちに幕を閉じました。

“最短距離の正解”を来年は会場で確かめよう
Appleデバイスの導入・運用は、単なるツール選択にとどまりません。ユーザ体験の質向上とセキュリティの堅牢さを同時に満たすことが求められています。Jamf Nation Live Tokyo 2025が示したのは、Jamfが宣言型デバイス管理やゼロトラストネットワークといったモダン技術を積極的に取り入れながら、現場の課題を着実に解決し始めているという事実です。数々のセッションはもちろん、本社エグゼクティブの来日やCEOのビデオメッセージは、来場者にとって同社のビジョンを直接確認できる絶好の機会となったのではないでしょうか。
また、システム管理やセキュリティに携わる人々にとって、普段はなかなか接点を持ちにくい他社の“運用のリアル”や、多彩なデモを通じて自社や学校に最適なAppleデバイス活用の“正解”を持ち帰れる点も、リアルイベントならではの体験価値といえます。今回参加できなかった人も、来年はJamf Nation Live Tokyoの会場で、最短距離の解答を自分の目で確かめましょう。

著者プロフィール
栗原亮(Arkhē)
合同会社アルケー代表。1975年東京都日野市生まれ、日本大学大学院文学研究科修士課程修了(哲学)。 出版社勤務を経て、2002年よりフリーランスの編集者兼ライターとして活動を開始。 主にApple社のMac、iPhone、iPadに関する記事を各メディアで執筆。 本誌『Mac Fan』でも「MacBook裏メニュー」「Macの媚薬」などを連載中。
