2025年6月24日、PFUからイメージスキャナ「ScanSnap」の最新フラッグシップモデル「ScanSnap iX2500」が発売されました。
バージョン3.0へと進化した専用ソフト「ScanSnap Home」の使い勝手と併せて、貸与された実機で従来モデルからの進化ポイントを中心にレビューします。
4年ぶりのリニューアルでデザインも機能も一新
ScanSnap iX2500(以下、iX2500)は、デスクトップ据え置き型のA4スキャナ。PFUの「ScanSnap」シリーズの中ではフラッグシップモデルに位置づけられ、基本コンセプトは2021年に発売された前モデルのiX1600を継承しています。
筆者は2世代前のScanSnap iX1500も所有していますが、今回iX2500と対面した際の第一印象は「ずいぶんスッキリしたな」というものでした。
外観上の大きな変更点は、本体上部の左右の角が斜めにカットされていることと、給紙部分のフタも斜めのラインで構成されている点です。これにより、全体的にスマートで洗練された印象を受けます。
これまでのScanSnapといえばオフィスに馴染む質実剛健なイメージがありましたが、iX2500は自宅のインテリアにも自然に溶け込むデザインに仕上がっています。

給紙部のフタを開けると、各種メニューを操作できるタッチパネルが現れます。こちらは前モデルの4.3インチから5インチへとサイズアップしており、感度の高い静電容量式を採用しているため、軽いタッチでスムースに操作できます。
また、スキャンを実行するためのボタンが、タッチパネル上ではなく物理ボタンとして独立して配置された点も大きな変更点のひとつです。もっとも使用頻度の高いボタンであるため、操作性だけでなく耐久性の面でも安心感があります。

ハードウェア面での主な改良点は、読み取り速度の向上と、一度にスキャンできる原稿枚数の増加です。前モデルのiX1600では、A4カラー原稿の読み取り速度が毎分最大40枚でしたが、iX2500では毎分45枚へと向上。毎分30枚が限界だったiX1500と比べると、実に1.5倍の高速化を実現しています。また、原稿の最大セット枚数はiX1600では50枚まででしたが、iX2500ではその2倍となる100枚に対応。大量の資料を一括でスキャンする場面でも効率的に作業できるでしょう。
一方で、読み取り速度の向上により、原稿が詰まりやすくなったり、給紙エラー時に原稿が破損するのではと心配される人もいるかもしれません。しかし、今回さまざまな紙質で数百枚のスキャンを試した範囲では、重送や紙詰まりといったトラブルは一度も発生しませんでした。また、複写用紙の控えのような薄い紙をあえて斜めに挿入してスキャンしたところ、自動で搬送がストップし、原稿が破損することもありませんでした。


有線インターフェイスの仕様は、前モデルに引き続きUSB 3.2 Gen1×1を採用していますが、コネクタ形状は従来のType-BからUSB-Cに変更され、Mac本体との接続性が向上しました。さらにWi-Fi接続も強化され、IEEE 802.11axに対応したことで「Wi-Fi 6」をサポート。より高速かつ安定したワイヤレス接続が可能になっています。

そして、これらの読み取り速度の向上、大型タッチパネルによる快適な操作性、Wi-Fi 6への対応といった進化を支えているのが、ScanSnapのために独自開発されたSoC(System on Chip)「iiGA(イーガ)」です。高い処理能力と低消費電力性能を両立しており、全体のパフォーマンス向上に大きく貢献しています。

「ScanSnap Home」のアップデートでiCloudにも対応
iX2500の登場に合わせて、スキャンの設定や読み取り、スキャン文書のファイル管理、クラウドサービスとの連携などをオールインワンで行える専用ソフト「ScanSnap Home」もバージョン3.0へとアップデートされました。また、iPhoneやAndroid向けのモバイル版「ScanSnap Home」も提供されています。
MacおよびWindows向けのScanSnap Homeでもっとも大きな変化と感じたのは、スキャン後にファイルの保存先や連携サービスを選択できる「クイックメニュー」が一新された点です。たとえば、従来から用意されていた「フォルダに保存」や「メール送信」に加え、「Microsoft Teams」「SharePoint」「Notion」が新たに連携先として追加されています。
さらに、クラウドストレージの保存先として「OneNote」や「iCloud」も新たに対応したことで、特にMacユーザにとっては利便性が大きく向上したポイントと言えるでしょう。

また、MacでScanSnap Homeを使用する際、プリセット以外の読み取り設定を自由にカスタマイズできるのも大きな魅力です。設定を追加するには、まずメイン画面左上の[スキャン画面を開く]をクリックし、表示されたスキャン画面で[プロファイル追加]を選択します。


すると、新規プロファイルの追加画面が表示されるので、左側のサイドメニューから連携したいサービスを選択し、右側でプロファイル名の変更やドキュメントごとの保存先やファイル形式などの詳細なスキャン設定を行います。
スキャンしたファイルはScanSnap Home内で管理することもできれば、Mac内にファイルとして保存することもでき、連携するクラウドサービスを指定することも可能です。設定が完了したら、[追加]をクリックしてプロファイルに登録します。なお、ScanSnap本体の操作でNAS(ネットワークHDD)に直接アップロード保存する機能は2025年秋頃のアップデートで提供される予定です。

追加したプロファイルは、スキャン画面にアイコンとして表示され、ScanSnap本体のディスプレイにも同じアイコンが反映されます。なお、プロファイルを削除したり、アイコンの順番を並び替えたりする場合は、[プロファイル編集]をクリックして操作します。ただし、画面の遷移や設定項目がやや複雑なため、旧モデルからのユーザは慣れるまで少し戸惑うかもしれません。

いつでもどこでも自分の設定をそのまま反映
ScanSnapは、本体のタッチパネルだけで手軽に書類をスキャンできる点が大きな魅力ですが、自分の用途に合わせて読み取りプロファイルをとことんカスタマイズできることも使いこなしのポイントです。そして、iX2500では自分で作成したお気に入りのプロファイルを、外出先やオフィスにある別のiX2500でも反映できるようになりました。
たとえば、自宅のMac上のScanSnap Homeで設定したプロファイルは、オフィスのiX2500のディスプレイにも同じメニュー構成として反映できます。また、モバイル版ScanSnap Homeでカスタマイズしたプロファイルも共有できるので、いつでもどこでも自分の設定環境で操作できるのが大きな利点です。
なお、モバイル版ScanSnap Homeでは、外出先のiX2500にiPhoneを近づけるだけで設定を反映できる機能や、モバイル版とMac版のScanSnap Home間でスキャンデータを自動同期できる「Data Sync」機能の追加も、今後のアップデートで予定されています。利用する場所やデバイスの種類にとらわれることなく、いつでもどこでも自分のスタイルで使えるiX2500の進化に、ますます期待が高まります。

[イメージスキャナ]ScanSnap iX2500
【発売】PFU
【Size】約292(W)×161(H)×159(D)mm
【価格】5万9400円(直販価格)
【URL】https://www.pfu.ricoh.com/scansnap/
【主なスペック】
【重量】3.5kg【備考】光学解像度:600dpi 読取速度(A4縦):両面・片面 45枚/分(自動解像度モード)、読取範囲:A4、A5、A6、B5、B6、はがき、名刺、レター、リーガル、カスタムサイズ(最大216×360mm、最小50.8×50.8mm)、A3は2つ折りまたはA3キャリアシートで対応、原稿搭載枚数:最大100枚(A4:80g/㎡)、読み取り方式:自動給紙機構(ADF)、両面同時読み取り(自動給紙モード、手差し/単送モード)、インターフェイス:USB3.1 Gen1/3.0/2.0/1.1(コネクタ:Type-C)、IEEE802.11a/b/g/n/ac /ax(2.4GHz/5GHz)
製品貸与:PFU
著者プロフィール

栗原亮(Arkhē)
合同会社アルケー代表。1975年東京都日野市生まれ、日本大学大学院文学研究科修士課程修了(哲学)。 出版社勤務を経て、2002年よりフリーランスの編集者兼ライターとして活動を開始。 主にApple社のMac、iPhone、iPadに関する記事を各メディアで執筆。 本誌『Mac Fan』でも「MacBook裏メニュー」「Macの媚薬」などを連載中。