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子どもにiPhoneを持たせる最適な年齢とは? データと実例から考えるスマホデビューのタイミング

著者: 牧野武文

子どもにiPhoneを持たせる最適な年齢とは? データと実例から考えるスマホデビューのタイミング

子どもが何歳になったらiPhoneを使わせるべきなのか、悩んだ経験のある読者はおそらく多いだろう。

ほとんどの場合、将来的に使うツールである以上、なるべく早いほうがいいと思う反面、大事な我が子を危険にさらすことにならないか、という不安もあるはずだ。

一体、iPhoneデビューに適切な年齢は何歳なのか。これが今回の疑問だ。

※この記事は『Mac Fan 2023年3月号』に掲載されたものです。

小学校高学年から中学校の間にスマホを買い与えるのが一般的

  「子どもにiPhoneを使わせるのは、何歳ぐらいが適切なのでしょうか?」と質問されることがある。

正直なところ、各家庭の教育方針に合わせて考えるべきことなので、他人である筆者から「○歳がいいですよ」と断言するのは気が引けるものだ。

ただ、もし迷っている人がいるのなら、世間一般の情報を内閣府がまとめているので参考にしてみてほしい。

iPhoneを使い始める適切な年齢は何歳なのか?1
10歳から17歳までの男女のスマホの利用率をまとめたグラフ(左が男子、右が女子)。男女ともに12歳(小学6年生)でスマホ利用率が50%を超え、16歳(高校1年生)でほぼ100%に近くなる。つまり、小学校高学年から中学校の間にスマホを使い始める人が多いようだ。画像:「令和3年度青少年のインターネット利用環境実態調査」(内閣府)より作成。

内閣府は毎年、「青少年のインターネット利用環境実態調査」を行っており、令和3年度の調査結果では、小学校卒業のタイミングでスマートフォン利用率が50%を超えている。

そして、中学校3年間の間に利用率が上がっていき、高校生になるとほぼ100%に近くなる。つまり世間では、「小学校高学年から中学校の間にスマホを買い与える」というのが一般的なようだ。



スマホを子どもに渡すのには不安はつきもの

そうは言っても、「しかし…」と親はためらってしまうだろう。その理由は、主に3つに分類することができる。

1つ目は、ゲームや動画などの娯楽目的で長時間使うこととなり、勉強や運動など、“健全”な学生生活の妨げになるのではないかということ。

2つ目は、インターネット経由でさまざまな危険に晒される我が子を、守り切れるのかという不安。そして3つ目が、長時間使用することによって、たとえば目など、健康に悪影響がないかという問題だ。

これらの問題に対して、ルールを強いて子どもに守らせようとしても、おそらく完璧に上手くいくことはないだろう。

なぜなら、大人であってもiPhoneでゲームをして時間を浪費し、ネット上でトラブルを起こし、近視ばかりでなく、老眼まで進行させてしまう人がたくさんいるからだ。

せっかくの休日がiPhoneをいじるだけで終わってしまった、という経験は誰もが持っているだろう。大人でも守れないことを、子どもに守れと言うのは無理な話だ。

それよりも、“子どもが世の中の流れから取り残されないようにしてあげること”が親の役割ではないだろうか。

中学生の60%以上がキャッシュレス決済ユーザ

金融経済教育を推進する研究会の「中学校における金融経済教育の実態調査報告書」によると、中学生の60%以上が何らかのキャッシュレス決済を利用している。下手をすると、大人よりも利用率が高いかもしれない。

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中学生が利用しているキャッシュレス決済の種類(複数回答)。「利用していない」と「無回答」を除いても、60%以上の中学生がなんらかのキャッシュレス手段を使っている。「中学校における金融経済教育の実態調査報告書」(金融経済教育を推進する研究会)より作成。

その多くは交通系電子マネー(49.2%)で、通学、あるいは塾や習いごとのために電車やバスに乗ったり、コンビニでおやつを買ったりという使い方だ。

おそらく、親から現金をもらい、コンビニや駅でチャージしているのではないかと想像できる。また、バーコード決済も利用率が21.6%と高かった。この場合は、その中学生は自分のスマホを持っており、親から送金してもらっているのだと推測できる。

あと10年もしたら、生まれてから現金というものを見たことがない、という子どもも現れるのではないだろうか。

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中学生に聞いたキャッシュレス決済の利点。本質を正確に捉えていて、大人よりもキャッシュレス決済の利便性を正しく把握しているようにも感じる。「中学校における金融経済教育の実態調査報告書」(金融経済教育を推進する研究会)より作成。


できるだけ早くという意見

繰り返しになるが、どのタイミングでスマホを与えるかどうかは、家庭ごとの教育方針から判断するべきで、家庭ごとに異なって当然だ。

そのため、これはあくまでも考え方のひとつとして受け止めていただきたいのだが、「iPhoneを与えるのは、早ければ早いほどいい」という考え方もある。

最初は、親が使わなくなったモバイル通信のできないiPhoneを、家の中でWi−Fi接続でのみ使える端末として与えるのもよい。

その後、子どもがiPhoneに興味を示したら、その機を逃さずにモバイル通信も使えるようにしたほうがよいのではないか。

iPhoneの「ペアレンタルコントロール」機能とは?

そのとき気になるのは、先に挙げた3つの問題だろう。ただ、iPhoneにはスクリーンタイムによる「ペアレンタルコントロール」という優れた管理機能が備わっている。

スクリーンタイムでは、「休止時間」「アプリ使用時間の制限」「通話/通信の相手の制限」「利用できるアプリの設定」「コンテンツとプライバシーの制限」などの制限が可能だ。

それらの設定はパスコードでロックできるため、子どもが勝手に設定を変更することも防げる。

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「スクリーンタイム」から、子どもを守るためのさまざまな制限をかけられる。ファミリー共有に登録していれば、利用時間も親のデバイスから確認可能だ。

たとえば、「ゲームは1日2時間まで」「夜9時以降は使用禁止」「家族以外との通話、通信の禁止」「アプリのインストール禁止」「アプリの課金禁止」「成人コンテンツの閲覧禁止」など具体的な制限をかけられる。

子どもからこれらの制限解除や緩和の要望があれば、つど話し合えばいい。その際の親子の会話が何より重要なのだ。

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アプリの利用時間制限は、特定のアプリ、あるいはジャンルを指定できる。つまり、ゲームは1日2時間、教育アプリは無制限といった設定ができるのだ。

幼少期にiPhoneを与えて、ルールがあることを当たり前にする

多くの親はスマホの専門家ではないため、子どもにとってどのような危険が潜んでいるのか、そのすべてを把握することは難しい。

しかし、ペアレンタルコントロールを設定すれば、危険性やルールについて、親子でじっくりと話し合う時間が自然と生まれるはずだ。

一方、子どもの目線に立つと、親に監視されていると感じることがあるかもしれない。小学校高学年や中学生であれば、親から信用されていないとネガティブに受け取ってしまうこともある。

その対策として、小学校低学年のうちにiPhoneを渡し、スクリーンタイムによって管理することは我が家にとっては当たり前、という認識を作ってしまうのがいい。

「iPhoneを与えるのは、早ければ早いほどいい」という考え方は、こういった意識を育む狙いがあっての意見である。

初めてのスマホはiPhoneがよい

Appleの専門誌だからというわけではなく、子どもに渡すスマホはiPhoneを強くおすすめする。その理由は2つある。

1つ目は、ペアレンタルコントロールのきめ細かさだ。Android搭載スマホでは、Googleを筆頭に同様の機能が提供されているが、そのGoogleの「ファミリーリンク」機能であっても、ペアレンタルコントロールと比較すると機能的な物足りなさが否めない。

また、他社の“管理機能・アプリ”の中には、子どもが管理者権限を取得することで、勝手に設定を変更できてしまうものもある。

しかも、その操作方法はSNSで「制限を解除する方法」などとして出回っていることがほとんどだ。

iPhoneはUIが変わらないから長く使いやすい

2つ目は継続性だ。iPhoneはUI(ユーザインタフェイス)の設計がしっかりしているため、初代iPhoneからその根幹がほとんど変わっていない。それは今後も同じと考えていいだろう。

一方Android端末の場合は、OSのバージョンによって大きな変更が加えられるうえ、各スマホメーカーが独自のUIを採用している。そのため、機種変更するとUIに慣れる作業が必要になる。

しかしデバイスを使う目的は、それを使って学んだり楽しんだりすることであり、操作方法を覚えることではない。

その点、iPhoneは新しい端末を買い替えても馴染みある操作感ですぐに使い始められる。特に、生まれて初めて使うデジタルデバイスは、UIおよび操作ロジックが明快かつ直感的な、iPhoneやiPadをおすすめしたい。

これらはあくまで、「こういう考え方もある」という提案だが、いずれにしても、iPhoneは親の管理下で子どもが使うデバイスとして非常に優れている、ということは間違いない事実だ。

著者プロフィール

牧野武文

牧野武文

フリーライター/ITジャーナリスト。ITビジネスやテクノロジーについて、消費者や生活者の視点からやさしく解説することに定評がある。IT関連書を中心に「玩具」「ゲーム」「文学」など、さまざまなジャンルの書籍を幅広く執筆。

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