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Intel Coreプロセッサを凌駕する“iPhone生まれ”の驚異的な実力/今井隆の「AppleシリコンでMacはどう変わるのか?」

著者: 今井隆

Intel Coreプロセッサを凌駕する“iPhone生まれ”の驚異的な実力/今井隆の「AppleシリコンでMacはどう変わるのか?」

画像:Apple

※この記事は『Mac Fan 2020年9月号』に掲載されたものです。

わずか7年で5倍以上の性能アップ

AppleがMacにAppleシリコンを採用することになった背景には、そのベースとなるiPhone向けSoC「Apple A」プロセッサの大幅な性能向上がある。

たとえば、マルチプラットフォーム対応のベンチマークソフト「Geekbench 5」での計測結果を見ると、2013年にはじめて64ビット化を果たした「Apple A7(iPhone 5sに採用)」では、そのシングルコア性能は当時のMacBook Proが搭載する第4世代コアプロセッサ(Haswell)の40%にも届いていない。

ところが、2017年にリリースされたiPhone X搭載の「Apple A10」では、当時のMacBook(12インチモデル)に搭載されていた第7世代コアmプロセッサ(Kaby Lake Y)を凌駕し、2018年に登場した「Apple A12」では、ついに第9世代コアプロセッサ(Coffee Lake R)に追いついた。

歴代iPhone(Apple A)とMacBook Pro 13インチモデル(Core i)における「Geekbench 5」のシングルコアベンチ。2019年にその性能で逆転し、現在は追い抜いていることがわかる(縦軸が性能、横軸がリリース年)。

そして2019年にiPhone 11に搭載された「Apple A13」では、第10世代コアプロセッサ(Ice Lake)を凌駕している。

特に注目したいのはその性能向上の速度で、Inelのコアプロセッサがこの10年でコアあたりの性能を約2倍に向上させたのに対して、Apple Aプロセッサは、わずか7年でその性能を5倍以上アップさせているのだ。

Appleが2020年の春にリリースした新MacBook Airに搭載された10nmプロセスの第10世代Coreプロセッサ「Ice Lake」。Apple A12Xの性能はこれを凌駕するとされている。
画像:Intel



マルチコア化によってさらなる性能向上へ

もちろんプロセッサの性能を決めるのはシングルコア性能だけではない。当時のIntelモバイルプロセッサはその主軸を2コアから4コアへと移しつつある。

一方でApple AプロセッサもApple A11以降で高性能コア2個+高効率コア4個のへテロジニアス・マルチコア構成としており、高負荷時には6コアをフル稼働させることもできる。

またiPad Pro向けに開発された「Apple A12X」は高性能コア4個+高効率コア4個となり、同じく4コア構成のMacBook Pro(13インチモデル)の性能を凌駕している。

こちらは歴代iPad(Apple AX)とMacBook Pro 13インチモデル(Core i)のGeekbench 5のマルチコアベンチ。2017年にはトータル性能でもMacBook Proに並んでいることがわかる(縦軸が性能、横軸がリリース年)。

さらに独自設計のGPUコアの性能向上も著しい。ギークベンチ5のベンチマーク結果によれば、iPad Proが搭載する「Apple A12Z」のMetalベンチは、第10世代コアプロセッサ(Comet Lake)の搭載するIRIS Graphicsと同等か、それ以上の性能を発揮している。

すでにApple Aプロセッサシリーズの性能は、総合的に見てIntelプロセッサからの置き換えが充分可能なレベルに達していたのだ。

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著者プロフィール

今井隆

今井隆

IT機器の設計歴30年を越えるハードウェアエンジニア。1983年にリリースされたLisaの虜になり、ハードウェア解析にのめり込む。

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