実は古いApple純正サーバの歴史
今でこそAppleは、純正のサーバマシンの開発・販売を行っていないが、古くは1993年に、当時のMacintosh Centris 650、同Quadra 800、同Quadra 950をそれぞれベースとするWorkgroup Server 60、80、95という、グループワーク用のサーバマシンを発表。2011年のMac mini Serverまで、ラインアップには純正のサーバマシンが名を連ねていた。中でも、はじめて専用の筐体を与えられて華々しいデビューを飾った製品が、2002年に誕生した「Xserve(エックスサーブ)」だった。
それまでのApple製サーバが、独立したコンピュータの形をしていたのに対して、Xserveはサーバ用の標準ラックに収まる薄いピザボックス筐体(1Uエンクロージャ)を採用し、必要に応じて複数台を組み合わせたサーバシステムを、高い空間効率で構築できる点が異なっていた。
OSとして専用のMac OS X Server 10.xが用意され、これは基本的にMac OS Xをベースに、DNS、POP3、IMAP、SMTPなどのサーバ向け機能や、リモート管理用のツールなどを追加したものだった。また、同名ながらバージョンが異なるMac OS X Server 1.xも存在したが、こちらはXserveより前に販売されていたMacintosh G3サーバ(Power Macintosh G3ベースのタワー型サーバ)向けのもので、Xserve用のMac OS X Server 10.xとは、カーネルレベルから異なる、完全な別物である。
再びAppleがサーバ専用機を作る日が来る?!
実は、載っている製品写真は、初代のXserveではなく、3代目にあたる2004年発表のXserve G5のものだ。Xserve G5ではそれまで4基あったフロントのドライブベイが3基に減らされ、代わりに排熱口が設けられた。Xserveに限らず、1Uエンクロージャのサーバ製品は、複数台を重ねて密に設置されるため、冷却ファンの騒音対策や空調設備にも気を遣う必要がある。
このデザイン変更からもわかるように、Xserve G5に搭載されていたPowerPC G5プロセッサは発熱量が大きく、Appleは熱対策に悩まされていた。ご存じのように、こうしたハードウェア設計上の課題が、Mac用のAppleシリコンの開発につながっていったわけだが、原稿執筆時の最上位モデルであるMacBook Proは、IntelのサーバクラスチップであるXeonプロセッサを採用し、それを置き換えるMシリーズチップは、まだ発表されていない。
しかし、自社のデータセンターに必要な電力を太陽光発電などで賄うなど、地球環境への影響を最小限に抑えようとするAppleゆえに、最上位のMac用Appleシリコンも、ワットあたりのパフォーマンスを最大化する方向で開発されたものとなろう。そして、サーバクラスの性能を持つ最上位チップは、データセンターの省エネ化にも貢献することになる。そのとき、社会貢献を考えるAppleとしては、自社のみならず一般企業にも積極的にAppleシリコン搭載のMacの採用を促していくはずだ。だとすると、Appleが再びXserveのようなサーバ専用機を復活させてくるかもしれない。この原稿を書きながら、そんなことを考えた。
※この記事は『Mac Fan』2022年2月号に掲載されたものです。
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著者プロフィール

大谷和利
1958年東京都生まれ。テクノロジーライター、私設アップル・エバンジェリスト、神保町AssistOn(www.assiston.co.jp)取締役。スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツへのインタビューを含むコンピュータ専門誌への執筆をはじめ、企業のデザイン部門の取材、製品企画のコンサルティングを行っている。