※この記事は『Mac Fan』2025年5月号に掲載されたものです。
是枝裕和監督がiPhoneで挑んだ27分の短編映画「ラストシーン」
Appleは、「iPhoneで撮影」というキャッチフレーズのもと、世界各国で著名な監督に映画作品制作を依頼している。日本では、過去に三池崇史監督が手塚治虫の「ミッドナイト」を手がけており、2025年5月には是枝裕和監督が制作した27分の短編映画「ラストシーン」が公開された。
この映画の主演は仲野太賀さんと福地桃子さん。ほか、黒田大輔さん、リリー・フランキーさんなどの実力派俳優も脇を固めている。

画像●筆者撮影
未来からの来訪者が告げる“脚本の運命”
この物語は、仲野さんが演じる脚本家の倉田が、依頼されるままにマンネリ化した脚本を書き続けるところから始まる。
そんな彼の前に、50年後から来た「倉田の孫」を名乗る由比が現れ、倉田に対し「あなたの作品がつまらなくて視聴率が0.3%だったから、未来ではテレビドラマが作られなくなった。だから脚本を直してほしい」と告げる。
さらに、由比の祖母が、倉田の手掛ける映画のヒロインの麗奈だと明かすのだ。この映画を縁に結婚する麗奈と倉田だが、映画の失敗が彼らの未来に大きな影を落とすのだとか…。
タイムトラベルものという設定はやや安易かもしれないが、プロカメラマンが大きなカメラで撮影する劇中劇を、さらにiPhoneで撮影するというユニークな構造がとても魅力だ。

画像●Apple
また、劇中で使われる携帯電話や倉田が乗る車はレトロなもので、台本もiPadではなく紙に印刷されている。Appleの作品でありながら、クラシカルな要素を備える点が面白い。
27分という短い尺の中に「モノ作りとは何か?」というテーマや、未来から来た女性との淡い恋など、さまざまな要素が詰め込まれている。特に、文字どおり“ラストシーン”は意外な展開が待っているので、ぜひ楽しんでご視聴いただきたい。
iPhone 16 Proの撮影機能が生む“映画的体験”
この作品は全編iPhone 16 Proで撮影されており、iPhoneならではの特殊な撮影機能を豊富に活用している。美しいスロー表現を実現する「シネマティックスローモーション」に加え、焦点を当てる役者を切り替えながら会話を演出する「シネマティックモード」。
さらに、強力な手ブレ補正機能「アクションモード」は、観覧車に向かって倉田と由比が走る場面で印象的に使われている。
公開記念の試写会では、主演の仲野さんと福地さんが「カメラの圧を感じないのが新鮮」と口を揃えた。また、「窮屈な観覧車の中に、主演の2人、監督、カメラマン、アシスタントの5人が入って撮影できたのもiPhoneならでは」と語る。
また、名シーンの1つに由比の顔に当たる夕陽がスゥッと落ちる場面がある。このシーンも、素早く撮影できるiPhoneだからこそ、夕陽が沈む瞬間を捉えられたのだそうだ。
是枝監督は「iPhoneで撮るという試みが、お芝居やプロとは何かを考えるいいきっかけになりました」と語った。iPhoneで撮影されていることをつい忘れてしまうほど、没頭してしまう意欲作をお楽しみあれ。

画像●Apple
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著者プロフィール
村上タクタ
Webメディア編集長兼フリーライター。出版社に30年以上勤め、バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴ飼育…と、600冊以上の本を編集。2010年にテック系メディア「ThunderVolt」を創刊。







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