子どもの教育において、個性や創造性を育むことが重要とされるが、現実には画一的な指導といった要因がそれを妨げていることがある。
その一方で、こうした子どもたちが将来活躍するであろう「企業」においては、従業員に対して多様な視点や柔軟な発想が求められており、硬直した思考を脱することを課題として捉える場合もある。
この二つの課題を解決する方法として、両者の共創に可能性を見出す株式会社miraiiは「CPOプロジェクト」の始動を発表した。子どもたちの独自の発想を企業の現場に取り入れることで、教育とビジネスの未来を切り開こうとしている。このプロジェクトの具体的な取り組みとその成果について、詳しく見ていこう。

企業と子どもが共創する未来
株式会社miraiiは、オンラインスクール「みらいいアカデミア」や教育プラットフォーム「みらいいパーク」を通じて、子どもが“自分らしさ”を見つけられるように支援してきた。これらのサービスは、子どもの好奇心や眠っていた興味関心を呼び起こすように設計されている。
こうした取り組みから発展して、「企業と子どもの共創」を目指した新しい教育プログラム「CPOプロジェクト」が起ち上がった。CPOとは「Chief Playful Officer」、つまり「最高遊び心責任者」を意味する。CPOは、実際に企業での新プロダクトなどの開発に参画する。「みらいいアカデミア」や「みらいいパーク」を通じて24以上の制作物を提出し、制作過程でのやり抜く力やアイデアを評価された子どもだけがCPOとして活躍できる。
企業はCPOを社内に配置することで、生まれたときからiPadやiPhoneに慣れ親しんできたα世代(2010年以降に生まれた世代)の子どもたちの柔軟な発想を取り入れ、α世代との関わりを深めることが可能になる。子どもにとっても、自分が社会を動かしていけるという自信や、なりたい自分を発見できるなど、企業と子ども双方にメリットがある。
子どもと社会が持つそれぞれの課題を解決する「CPOプロジェクト」
現代の子どもが持つ課題
子ども側の課題としては、以下の点が挙げられる:
- 好きなことを仕事にするのがよいと言われるが、どうやって好きなことを見つけるのかがわからない
- 学校という場で行われる画一的な教育システムの中で、個性が失われていく
子どもが大人になり仕事に就く際には、自分が興味を持っていることや自分に向いていることを仕事にすべきだが、それをどうやって知るのかという問題がある。学校教育の現場では、画一的な指導が行われる場合もあり、そうなると、個別最適な学びを実現できない。そうした理由で、社会と教育の間には大きなギャップが存在している。
こうしたギャップを解消するために、miraiiでは「みらいいアカデミア」や「みらいいパーク」を使って好きなもの/ことを発見する機会を提供し、勉強する意味を再定義できるような支援を行っている。
現代の企業が持つ課題
企業側の課題としては、以下の点が挙げられる:
- 新しい発想が生まれない、提示されない
- 皆が“正解”を探してしまう
- デジタルネイティブであるα世代の特性が理解できない
企業では、社内での固定化された人間関係や、会社が持つリソースと課題をすべて考慮した発言が求められるなど、硬直した思考やコミュニケーションが展開されやすい環境にある。加えて、次世代を担うα世代を理解できなければ、未来の製品を作り出すこと、マーケティングすることは難しい。
「CPOプロジェクト」は両者の課題をどうやって解決するのか
このような硬直した企業に子どもが入ると、子どもは突飛な提案や、知らないことについての質問を社員に投げかける。前提条件を持たない子どもなのだから当然だ。しかし、この発言こそが企業にとって“新しい風”となる。
子どものプリミティブな疑問が「そもそも前提が間違っていた」ことや、思いつかない発想を企業にもたらすのだ。そうした子どもとの対話の中で、自分たちが“正解”を探していることに気づくことができ、柔軟な発想をインプットすることが可能になる。
さらに、突飛な発言に真摯に耳を傾ける環境が作られるので、社員もこれまで言いづらかったアイデアを発言しやすくなる。つまり、心理的安全性が高い組織となるのだ。
また、直接対話によって、デジタルネイティブであるα世代の考え方への理解が深まる。
CPOプロジェクトは子どもの課題も解決する。実際に存在する社会課題に向き合うことで、新たな面白いものや興味があることを見つける機会が与えられる。さらに、実際の企業で働く大人と真剣に話し合うことで、自己肯定感や、探究心が育まれる。

先行事例で確認された効果
CPOプロジェクトは、株式会社UACJや清水建設株式会社、パナソニックグループなどですでに実施されている。
CPOプロジェクトに参画したパナソニックグループのエレクトリックワークス社では、2カ月の間、CPOと共同でワクワクする光の作品制作を行なった。参加したCPOの1人は、家庭での課題を解決する「犬のウンチ拾いお助けピカピカセンサー」を開発した。
さらに、大阪・関西万博のパナソニックグループパビリオン「ノモの国」のライトアップ演出も制作している。どの色をどのタイミングで光らせるのかなど、ライトアップ演出を企業とCPOがつくり、実際のパビリオンでもライトアップがなされた。
エレクトリックワークス社は、「光楽(光を楽しむ文化)」を目指しており、α世代の新たな視点や接点が必要だと感じていた。担当者は、「CPOと仕事をしていく中で、光の新価値を創出するきっかけになり、光楽の文化醸成に一歩近づいたと感じている」という。

このように、CPOプロジェクトは教育とビジネスの垣根を越え、子どもたちと企業が共に未来を創造する新しいモデルを提示している。今後、この取り組みがどのように広がり、社会全体に影響を与えていくのか、注目していきたい。子どもたちの無限の可能性が、より良い未来が築かれることを期待したい。
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