一部のユーザを悩ませてきたAppleの二重アカウント問題に、ようやく公式による解決策が登場。アカウントを一つに統一することで、管理は非常にスムースになるはずだ。しかし、すんなり移行できないケースも発生している。
長年の悩みの種、二重アカウント問題解決なるか
Appleの一部ユーザにとって、長年の懸案事項だったことがある。それは、Apple Account(旧Apple ID)の二重問題だ。2025年2月末、Appleはついに、この解決策を提示した。
Appleデバイスでは、個人のiCloudアカウントと、コンテンツ購入およびサブスクリプションの支払いに異なるアカウントが使用できる。この仕組みが存在するのは、2011年にアイクラウドが登場し、クラウドハブに移行する以前の名残りである。
2000年代のデジタルハブ時代、アカウントは今のようなIDとしての機能を持たず、ユーザはApp Storeなどでの購入のためにアカウントを作成していた。アップストアで購入したアプリは、最大5台のデバイスにインストール可能だったが、今のようなファミリー共有の仕組みはなく、アプリの購入・管理用に使うアカウントと、個人用のアカウントを別にすることで、購入したアプリを家族の間で共有できるようになっていたのだ。
しかし、クラウドハブの進展に伴い、個人データや購入コンテンツ、利用サービスを1つのアカウントで一元管理する流れが強まった。さらに、ファミリー共有やビジネス向けのソリューションが充実したことで、2つのアカウントを併用する必要性が低下するようになった。

むしろ、アカウントを分けることで、デバイスのセットアップや家族との共有設定が煩雑になる。誤ったアカウントでコンテンツを購入するなど、不便が増大していた。
Appleは今回、1人のユーザが持つ2つのAppleアカウント間で、購入したコンテンツやサブスクリプション契約を移行できるようにした。1つのアカウントに統一して、管理できる機能を導入したわけだ。
未だ不完全なAppleアカウント移行機能
アカウントの移行機能は、 iOS 18およびiPadOS 18で利用可能だ。1つのデバイスに両方のアカウントでサインインし、デバイスの「設定」アプリで行う。移行できるのは、たとえば購入したアプリや音楽、本などのコンテンツだ。また購入・管理用アカウントに、紐づけられている支払い方法も統合アカウントに移行できる。
一方で、アイクラウドのパーソナライズデータは、移行できない。つまり、今回導入された移行機能は、コンテンツ購入・管理用アカウントから個人アカウントへの移行のみ。それ以外の目的でアカウントを統合することはできないというわけだ。
筆者も実際に試してみたが、まだ完全な解決とは言いがたい印象だった。購入・管理用に使っていたアカウントをファミリー共有から外す必要があり、両方のアカウントで二要素認証を有効化しなければならないなど、現時点では制約が多いのだ。
それでも、Appleが長年のユーザの悩みに対応し始めたことは歓迎すべきである。この機能により、アカウント管理は大幅に簡素化されるはずだ。今後、すべての対象ユーザがその恩恵を享受できるよう、改善に期待したい。

https://support.apple.com/ja-jp/117267

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