旅が生活そのものであり、遊びでもあり、仕事でもあるライフスタイルを送るぼくが、「単なる観光旅行」をしないことは、これまで書いてきたとおり。
今年の欧州移動生活から戻って数日後ふと思い立って、ぼくが中学生から記録し続けている「人生やりたいことリスト」の中の、「行きたい所」カテゴリーを覗いてみた。ちなみにこのリスト、もともとは、紙切れやノート、ポストイットに書き込んでいた。
社会人3年目くらいからはシャープ社のPDA「ザウルス」を使うようになってテキストデータで記録するように。さらに時間を見つけては、紙に書いてきた古いリスト群のデータ化作業を敢行。
膨大なリストのデジタル化が完了したあとは、それを(会社から無理やり支給された)ウィンドウズPCと同期させて管理するようになっていった。と…簡単に書いたが、当時はまだモバイルデバイスとPC間の連携は確立されておらず、設定は複雑怪奇なうえに、不具合多数のソフトを何とか使っていたことを今でも思い出す。
今では「Todoist」というオフラインでも使用可能なタスクアプリを活用し、iPhoneとMacBook間でまったく苦労なく完全シームレスに同期させながら、引き続きリストを更新し続けている。
その「行きたい所リスト」の下には「海外」と「国内」という分類が存在し、さらにそれぞれの下層には「自然」「遺跡」「都市」「その他」とある。その中を一つ一つ見ていくと、この数年の移動生活で、半分近くの「行きたい所」を〝達成〟していたことを知り、ジーンと感動に浸ってしまった。
しかも、ほぼ全部のリストに記憶があり、いつ、どういう状況でその「行きたい所」をメモしたかを覚えていたことには、とても驚かされた。「行ってみたい」という衝動というのは、たとえ小さくても、人間の根源的かつ大切な欲求なのだと、改めて確信。
さらにぼくは、別のことに気づいたのである。「ピラミッド」「マチュピチュ」「アンコールワット」「ドブロブニク」「サグラダファミリア」など、いわゆる絶景のカテゴリーに入るような、メジャーな観光地が多数入っていたのだ。そして、それらのいくつかも、“達成”していたことを知る。
そして、メモにあった「ドブロブニク/クロアチア/美しい港町」こそ、2017年の移動生活で最初に訪れた場所であった。宮崎駿監督率いるジブリの名作「魔女の宅急便」の舞台にもなったとされる世界遺産の街。着いたその日の夕刻、高台に登った瞬間、ぼくの目に飛び込んできたのは、紺碧の海、城壁、連なる朱色の屋根という圧倒的な絶景だった。
感動だった。そして、その心震える体験は、ぼくに想像以上のインスピレーションを与えてくれた。それがエネルギー源となり、それから数日間、ぼくのクリエイティビティが最大化して仕事のクオリティが高まったことは言うまでもない。
「心から見たい! と思う絶景は、絶対に見たほうがいい」。こんな小学生のようなシンプルな言い分がぼくの答え。観光はしない、でも絶景は見る。モバイルボヘミアンに新たなルールが加わった。

※この記事は『Mac Fan 2018年2月号』に掲載されたものです。
著者プロフィール

四角大輔
作家/森の生活者/環境保護アンバサダー。ニュージーランド湖畔の森でサステナブルな自給自足ライフを営み、場所・時間・お金に縛られず、組織や制度に依存しない生き方を構築。レコード会社プロデューサー時代に、10回のミリオンヒットを記録。Greenpeace JapanとFairtrade Japanの日本人初アンバサダー、環境省アンバサダーを務める。会員制コミュニティ〈LifestyleDesign.Camp〉主宰。ポッドキャスト〈noiseless world〉ナビゲーター。『超ミニマル・ライフ』『超ミニマル主義』『人生やらなくていいリスト』『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』『バックパッキング登山大全』など著書多数。