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iMac Proのインターフェイス/ディスプレイ/筐体内部構造

iMac Proのインターフェイス/ディスプレイ/筐体内部構造

インターフェイス/INTERFACE

内部アーキテクチャが一新されたiMacプロだが、外部の入出力インターフェイスも大幅に拡充された。まず、ストレージなどの周辺機器の接続用にサンダーボルト3が装備されている。これはMacプロに搭載されたサンダーボルト2(20Gbps)の2倍となる最大40Gbpsの速度を誇り、ポートの数ではiMacやMacBookプロの2倍となる4ポートを備える。まさに、速度もポート数も従来モデルを上回る最強モデルだ。これにより内蔵ストレージでは保存しきれない高解像度映像などの大容量ファイルもストレスなく扱えるはずだ。

また、サンダーボルト3は外部ディスプレイポートを兼ねており、強力なグラフィックス性能の助けも得て、5Kディスプレイを最大で同時に2枚あるいは4Kディスプレイを4枚同時に接続できる。この広大なマルチディスプレイ領域を利用して、複数の処理を同時に行うなどクリエイティブな作業を効率的に行えるだろう。

そして、有線LANインターフェイスも長足の進歩を遂げた。10ギガビットイーサネットの採用である。理論値で1.3Gbpsの通信が可能なIEEE802・11acなど、ワイヤレス通信の進歩が目覚ましい一方で、有線LANは長らくギガビットのまま停滞していた。サーバ運用などを行う業務用途ではギガビットイーサネットを2基搭載したMacプロで帯域が2倍の仮想ネットワークを構築する例もあったが、ストレージの高速化や大容量化には追随できずボトルネックとなることもしばしばあったのも事実。そんな状況を鑑みると、iMacプロでついに10ギガビットイーサネットを採用したことで、ネットワーク内におけるサーバ・クライアントでのやり取りなどさまざまなシーンで絶大な効果を発揮するはずだ。

iMacシリーズのインターフェイス一覧

有線インターフェイスであるオーディオ、SDカード、USB 3.0およびワイヤレスネットワークの802.11acのWi-FiとBluetooth 4.2も共通仕様だ。だが、Thunderbolt 3ポートが2基多く、有線Ethernetも高速化されている。

40Gbps Thunderbolt 3

高速大容量なストレージや高解像度な外部ディスプレイとの接続は、データ転送速度が最大40Gbpsと高速なThunderbolt 3で行える。ポートの数もiMacの2基に対して、iMac Proでは4基装備し、数珠つなぎのデイジーチェーン接続にも対応しているので、より多くの周辺機器を同時につなげるのが利点だ。また、コネクタの形状はUSB-Cと共通で、最大10GbpsのUSB 3.1 Gen 2接続のインターフェイスとしても動作する。

4K/8Kビデオ編集など大容量ファイルの取り扱いにはThunderbolt 3対応のRAIDストレージが欠かせない。写真はPROMISE Pegasus3 R4で、合計12TBの容量を持つ(【価格】16万9800円)。

SUMMARY

Mac Proの2倍の速度のポートが4つも備わっている!

最大4400万ピクセルのディスプレイ領域

Thunderbolt 3ポートは外部ディスプレイの出力も兼ねている。リフレッシュレートが60Hzの5Kディスプレイ(5120×2880ピクセル)なら同時に2台接続可能で、表示色数も10億色に対応する。約1470万ピクセルの5Kディスプレイが本体を含め3枚表示でき、合計で最大4400万ピクセルという広大な表示領域を利用可能だ。また、家庭用の4K(4K UHDTV、3840×2160ピクセル)であれば、60Hzで同時に4台接続できることになる。なお、業務用の4K(DCI 4K、4096×2160)でも4台接続が可能だが、その場合は表示色数が数百万色以上となる。DisplayPort 1.2規格に対応しているので、別売りのアダプタを利用すればThunderbolt 2、HDMI、DVI、VGA出力にも対応する。

「Thunderbolt 3(USB-C)-Thunderbolt 2アダプタ」(【価格】5200円)を用意すれば、従来のThunderbolt対応ディスプレイも接続できる。ただし、ディスプレイへの給電はできないので注意が必要だ。

SUMMARY

5Kディスプレイが本体含め3面も利用できる!

NBASE-T 10GbEthernet(10GBASE-T)

業界団体のNBASE-T Allianceが策定した規格で、有線LANとしてはほぼ10年ぶりのアップデートとなる。これはiMacやMac Proなどが搭載するギガビット(1000BASE-T)Ethernetより10倍高速だ。ただし、その高速性が活かされる用途はインターネット接続よりも、同一ネットワーク内に複数台の10GbE対応マシンを設置したスタジオやオフィスなどが想定される。性能を引き出すにはスイッチ類も10Gb対応でLANケーブルもCAT6a以上が必要だ。

ネットギアの10GbE対応スイッチングハブ「XS505M」(a 8万4000円)。クロックレートが低い2.5Gb、5Gbにも対応し、従来のネットワーク機器もそのまま利用できる。

SUMMARY

これまでの10倍速い高速ネットワークを実現する!

iMac Proの拡張性

一体型Macということで拡張性が低いのでは?と思う人もいるかもしれないが、その心配はない。Thunderbolt 3は10Gbpsのバス幅を持つPCI Expressの4レーンをそのまま外部に引き出し、ディスプレイポートやUSB 3.1をも兼ね備えた、汎用性の高い入出力インターフェイスだからだ。Mac Proのようにポートへのアクセスを頻繁に行うのであれば、Thunderbolt 3対応のハブを利用するとよいだろう。

ベルキンの「Thunderbolt3 Express Dock HD」(a 4万2980円)を用いれば、ケーブル1本でディスプレイやネットワーク、Thunderbolt 3(USB-C)やUSB-A、オーディオなどを引き出して好きな場所に設置できる。

ディスプレイ/DISPLAY

iMacプロの5Kレティナディスプレイは、2017年6月に発売されたiMac 5Kモデルと基本的に仕様が共通だ。いずれも、これまででもっとも明るく、10億色以上を映し出す性能を持つ。これにより従来よりも写真やビデオのグラデーションが滑らかに表示される。

また、色域の広いデジタルシネマの「DCI─P3」規格をサポートしているので、撮影時の条件がほぼそのままディスプレイ上で再現される。これは、ハイエンド向けの写真や映像の処理において大きな効果を発揮することは間違いないだろう。

また、ディスプレイに埋め込まれたフェイスタイムHDカメラがアップデートされていることも見逃せない。これは単なる画質向上だけが目的ではなく、T2プロセッサとの連係で顔認証機能などを利用できるようにするためと考えられる。

iMacシリーズのディスプレイ一覧

ディスプレイそのもののスペックは、iMac 27インチの5K RetinaディスプレイモデルとiMac Proは共通だ。しかし、グラフィックス性能はiMac Proが大幅に上回っているため、写真や映像表示がより快適に感じられる。

500ニト43%の明るさ向上

Retinaディスプレイは一世代前のモデルと比べて約43%明るくなり、その輝度は500ニトとなっている。通常、ディスプレイの輝度はカンデラ毎平方メートル(cd/㎡)で表記されることが一般的。だが、意味としては同じだ。他社製では普及価格帯で250ニト、中価格帯の4Kディスプレイでも350ニト程度であるのに比べると明るく、リビング用の液晶テレビに匹敵する。

ディスプレイは常に最高輝度で表示するわけではない。しかし、輝度の高さは作業環境を選ばず最適な明るさで表示できるメリットがある。

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明るい部屋でも画面をくっきり表示できる!

10億色に対応10ビットの空間的および時間的ディザリング

明るさやコントラスト比だけでは画質の向上にはつながらない。Retinaディスプレイでは光源を一般的な白色LEDではなく、赤色・緑色蛍光体のLEDに切り替えることで光の三原色を均等に表現することを可能とした。また、RGB各色の配置による混色と、点滅による混色を組み合わせることにより、RGB各10ビット=約10億7374色の表示に対応している。

SUMMARY

広色域が必要な作業で威力を発揮する!

1080p対応のFaceTime HDカメラ

ディスプレイ上部に内蔵されたFaceTime HDカメラは通常のiMacよりも高解像度なものが搭載されている。これは、新たに搭載されたT2チップで画像信号プロセッサとの連係が行われることと関係しているだろう。AppleのWEBサイトには顔検出ベースの自動露出機能や自動ホワイトバランス機能が利用できるとの記載があるが、将来的にはFace IDのような顔認証やアニ文字のような機能も利用できるようになるかもしれない。

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FaceTime HDカメラの顔認識が強化された!

筐体内部構造/INTERNAL STRUCTURE

プロ向けMacの大きな課題のひとつに熱処理の問題がある。ハイエンドクラスのCPUやGPU、メモリは処理中に大きな熱を発生させるため、適切な冷却を行う必要があるからだ。

また、その処理性能の高さに伴って消費電力も増えるため、安定した動作を支えるための電源ユニットも高出力なものになってくる。この電源自体も熱源となるため、通常はワークステーションクラスのマシンは筐体を大型化してファンを複数台搭載するのが一般的だ。ところが、このような方法では騒音が大きくなり、設置場所も制約が生じてしまうため、デスクトップ用途としては適さない。

現行のMacプロが特徴的な円筒状の形状をしているのも、この排熱性能と静音性能という相反する要求を克服し、熱処理を最大限効率よく行うためにほかならない。しかし、小型化を追求するあまり年々進化するGPUなどの世代交代に対応できず、筐体設計自体を見直さざるを得ない状況に陥ってしまった。

一方、iMacプロはこのMacプロを上回る処理能力を、スリムなiMac27インチモデルの筐体内に詰め込むという新たな課題に直面した。従来のiMacと同じ内部設計では到底この熱処理問題に対応できないため、空気の流れ道(エアフロー)やヒートシンクのサイズや設置場所を再設計することとなった。大型のブロワーを2台搭載することにはなったが、熱処理性能の向上によって500Wもの電力消費に対応することに成功した。

なお、筐体内部設計の見直しと合わせて、内蔵するスピーカのエンクロージャサイズも大型化し、単体の音質も向上した。映像や音楽制作の現場ではそのまま単体で利用することは少ないが、音質の向上はすべてのユーザにメリットがあることなので歓迎したい。

先進的な温度管理

薄さと低消費電力を追求したiMacのボディに、Mac Proを上回るハイパフォーマンスな部品を搭載したiMac Pro。新たに独自の冷却システムが採用されている。透視図で目立つのは2台の大きな送風用ブロワーと、空気の通り道に設置されたヒートシンクおよびCPUやGPUからの熱を伝えるヒートパイプだ。Appleによると、この熱処理アーキテクチャにより、エアフローが従来モデルより約75%向上し、システムの熱容量が80%増加したとしている。

エアフローは、デュアルブロワーの回転によって液晶下のスリット部分から吸気を行い、その風をヒートシンク部分に当てて冷却している。排気はディスプレイ背面の中央下部から行われる。

SUMMARY

本体はスリムなまま高い冷却性能を発揮する!

まったく新しい内蔵スピーカ

iMac Proは内部アーキテクチャの見直しに伴い、本体に内蔵するステレオスピーカも強化されている。筐体内部の左右にあるエンクロージャが大型化され、音量アップや低音性能の向上がうかがえる。さらに、4つのビームフォーミングマイクの搭載で、周囲の環境ノイズに影響を受けることなく音声の聞き取りが可能だ。これにより、FaceTimeなどの会話が明瞭に行えるだけでなく、Siriなど音声操作の性能向上にもつながるだろう。

サウンドはディスプレイ下部のスリットから空間に伝わり、デスクの天板などに反射して伝えられる。設置状況によっては音の聞こえ方に影響が生じる可能性がある。

SUMMARY

音楽制作にも適したサウンド性能に進化した!