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Mac標準日本語フォントの上手な使い分け●Macで極める日本語デザイン

Mac標準日本語フォントの上手な使い分け●Macで極める日本語デザイン

表現豊かな標準フォント

OS X エルキャピタンでは、新たに「クレー」「筑紫A丸ゴシック」などの新しいフォントが収録され、日本語文書の表現の幅がぐっと広がりました。さらにヒラギノ角ゴシックのウエイトもW0からW9まで収録されるようになり、より細かな使い分けができるようになっています。

このように収録フォントが増えたのは喜ばしいことですが、だからといって1つの文書でむやみに多用するのは困りもの。46ページでも述べましたが、1つの文書に使うフォントは絞り込んでいくのが成功の近道。まずはお気に入りのフォントを見つけて、そこから徐々に表現の幅を広げましょう。

フォントを使い分けるうえでまず最初に覚えておきたいのは、違和感なくスッキリと読めるフォントと、個性の強いフォントの2種類があるということ。前者はヒラギノ角ゴシックW3やヒラギノ明朝W3、後者はクレーやヒラギノ丸ゴシックなどが相当します。

スッキリと読めるフォントは長い文章などに使っても抵抗感なく読み進められますが、個性の強いフォントを長い文章に使うと、読んでいる途中で疲れてしまったりします。

フォント選びは、いわば文章の「隠し味」。読む人にフォントを意識させることなく、自然に印象をコントロールできるような使い分けを目指しましょう。

細身の書体で洗練された印象を

ゴシック系

ヒラギノ角ゴシックは、見やすくスタンダードな書体でどんな文書にも相性は抜群。定番のW3とW6は、画面でも見やすく使いやすいウエイトですが、プリントアウトして使う文書の場合はW2とW5という組み合わせもおすすめ。シャープで品のいい仕上がりになります。

游ゴシックのミディアムも使いやすいフォントです。ヒラギノ角ゴシックW3とほぼ同じくらいの太さで文字の形も似ていますが、ひらがな・カタカナはヒラギノよりもスマートな印象です。さらに、半角数字や欧文のプロポーション横幅の狭いタイプ(「コンデンスド」タイプ)を採用しており、洗練された印象になります。英数字の多い文章で特に使いたいところです。

游ゴシック体は、ヒラギノ角ゴシックよりもふところが狭いためスマートな印象が出ます。英数字がヒラギノより幅が狭いことも含め、全体的にシャープなイメージを演出できます。

太めのフォントで表現するときは、英数字も幅広なほうが安定感があります。本文に游ゴシックのミディアム、見出しにヒラギノ角ゴシックW6という組み合わせもいいでしょう。

スタンダードで使いやすいヒラギノW3とW6。Macの画面やプレゼンスライドでも読みやすいウエイトです。

プリントアウトして使う文章なら、W2とW5の組み合わせもおすすめ。なお、見出しと本文で使い分ける場合、ヒラギノなら2ウエイト以上の差をつけたほうがメリハリが出ます。

W7以上のヒラギノ角ゴシックは、小さなサイズで使ったり長い文章に使うと潰れて格好悪くなってしまいます。太いフォントほど短いセンテンスで、サイズも大きめで使うのがおすすめです。

Macで古くから使われているOsaka。読みやすいフォントではありますが、本文に使うと太くてやや野暮ったい印象もあります。

36ポかなは使い方を工夫

明朝系

ヒラギノ明朝と游明朝体は字形が比較的似ており、どちらも使いやすい書体です。游明朝体のほうが英数字の幅が狭くなっており、游明朝体を使うことでよりスッキリした印象を与えることができるでしょう。また、游明朝体のボールドはヒラギノ明朝W6よりも若干細く、見出しに使うと優しい印象を与えます。

「游明朝体+36ポかな」は、漢字部分は游明朝体と共通のものを使い、かな部分にクラシックな字形を採用したもの。和の雰囲気のある美しいかな文字ですが、少し癖のある形なので、長い文章に使うと読み疲れてしまうかもしれません。もともとこのフォントは、見出し用途を意識して作られたかな書体なので、短いセンテンスで印象的に使うのがおすすめです。

游明朝体+36ポかなというフォントは、漢字部分と英数字は游明朝体と共通です。かな(カタカナも含め)部分に違いがあり、よりクラシカルな字形を採用しています。

36ポかなは、短いセンテンスで印象的に使うのがよいでしょう。「和」の演出にはぴったりですが、最近はさまざまな用途でこうした「オールド書体」が使われています。

一般的に、ゴシック体は力強さや快活さといった印象を、明朝体はトラディショナルで上品な印象を与えます。新聞や小説などで読み慣れているため明朝体のほうが長文に向いていますが、この感覚は世代によって変わってくるかもしれません。

ヒラギノ明朝と游明朝体は、漢字もかなも非常によく似ています。大きな違いは英数文字で、游明朝体のほうがスマートな印象を与えます。

使い勝手のいい筑紫A丸ゴシック

丸ゴシック系

丸ゴシック書体は柔らかな印象を受けますが、同時に子どもっぽい雰囲気も与えてしまうため、使用には注意が必要です。しかし、筑紫A丸ゴシックはヒラギノ丸ゴシックに比べると、柔らかさと大人っぽさの両方を演出できる使いやすさがあります。文字の中に含まれるふところが狭いのが、その印象の理由です。

柔らかい丸ゴシック体は子供っぽい印象になる点に要注意。その点、筑紫A丸ゴシックは狭いふところが大人びた印象を与え、また、読みやすく多少長めの文章でも利用できます。

オールドスタイルのかなを持つ筑紫B丸ゴシック。女性の手書き文字のような優しい印象を与えてくれます。使いどころを絞って効果的な演出をしましょう。

狙いに合ったフォント選びを

装飾系

クレーは鉛筆やペンを使って書いたような印象のフォントです。語りかけるような文章や「利用者の声」などの部分で使うと、このフォントの手書き感が良い効果を出してくれるはず。なお、OS Xでは装飾系フォントは乏しいので、文書にアクセントを加えたいときは太めのヒラギノ角ゴシックを使うという手があります。

クレーは手書きの印象が一番のポイント。語りかけるような文体の場所や、利用者の声といったエリアで使うと相性が抜群。見出しだけでなくある程度長い文章でも使えます。