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ハードウェアの構造、仕組みを知ろう!

第100回 バッテリとマグセーフの仕組みを知ろう?

著者: 吉田雷

第100回 バッテリとマグセーフの仕組みを知ろう?

モバイルシーンに不可欠なバッテリと電源管理

コンピュータの動作には、安定した電源の供給が必要です。iMacやMacミニなどのデスクトップ型Macは家庭用コンセントから直接電源ケーブルで供給し、モバイル利用を想定したMacBookシリーズではバッテリからの電源供給も可能です。

このバッテリの駆動時間を伸ばすには、バッテリの容量が大きいことが望ましいものの、薄型のMacBookシリーズでは簡単に実現できません。

たとえば、12インチのMacBookではシート状の固定式バッテリを分散してボディに接着するなど、限られたスペースを最大限に活用することでバッテリ容量を確保し、駆動時間を伸ばしています。

また、長時間Macを駆動させるにはバッテリの容量だけでなく、消費電力を抑えることも重要です。Macではハードウェアとソフトウェアがそれぞれ省エネルギー機能を持つことで消費電力を抑えています。

モバイル向けの省電力なCPU、メモリ、ストレージを採用したり、使用状況に応じてOS Xが電源やソフトの動作を効率よく制御するなど、Macは全体が省電力になるよう設計されています。なお、デスクトップ型Macでも同様にエネルギー効率とパフォーマンスを両立させています。

また、独自設計の電源アダプタ「マグセーフ(MagSafe)」を採用しているモデルでは、ケーブルに無理な力がかかったときにMacからコネクタが外れるようになっています。これもモバイルでの安全性や利便性を追求した細やかな工夫です。

【アップル知りたいキーワード】

Macのバッテリの基本を知る

バッテリの駆動時間の目安になる「バッテリ容量」とは、どのようなものでしょうか。また、MacBookにはどのようにバッテリが搭載されているのでしょうか? バッテリの基本を解説します。

 

バッテリ容量と電力

バッテリ容量を表す単位「mAh(ミリアンペアアワー)」は、1時間あたりに電流「A(アンペア)」をどのくらい流せるかがわかり、左図での水タンクの容量を表しています。たとえば、5000mAh(m=ミリは1/1000)のバッテリは5000mAの電流を1時間流せ、大きければ大きいほど容量が大きくなります。電力「W(ワット)」は電圧「V(ボルト)」と電流をかけたもので、電圧が高ければ同じ電流でも電力が大きくなります。

 

バッテリの詰まったMacBook

以前のMacではユーザがバッテリを交換できましたが、現在ほとんどのMacBookシリーズでは交換できません。特にMacBook12インチモデルでは、空間を最大限に活かすため筐体の底面にまでびっしりとバッテリが敷き詰められて接着されているため、専用工具を使っても剥がすことが困難です。(写真/iFixit)

 

バッテリの状態を確認する方法

[オプション]キーを押しながらアップルメニューを開き、[システム情報]の[電源]を選ぶとバッテリの充放電回数や現在の容量が確認できます。バッテリの交換は購入から1年以内であれば無料で、それ以降は有償で交換可能です。【URL】http://www.apple.com/jp/batteries/service-and-recycling/

【ハードウェア図鑑】Macの電源装置を知ろう

家庭用コンセントから流れる電気をMacBookシリーズでは電源アダプタ、デスクトップ型Macでは電源ユニットを介してMacに供給しています。この仕組みを、電気の特性とともに解説します。

 

Macの電源装置の仕組み

家庭用100V電源は、時間の経過とともに電圧の正負(+と−)が変化する「交流」のため、そのままでは「直流」で動作するMacで利用できません。そこで、MacBookシリーズでは「電源アダプタ」を、デスクトップ型Macでは「電源ユニット」を介して電流を交流から直流に変換しています。MacBookシリーズでは電力の一部をバッテリの充電へと回し、Mac本体は電源とバッテリ両方から給電できます。なお、12インチのMacBook以外には、電源アダプタと本体の接続に磁石を利用した脱着の容易な独自規格「マグセーフ」が採用されています。

 

マグセーフコネクタの仕組み

マグセーフコネクタには5つの接点があり、中央以外の4つが+極と−極です。中央の接点はチャージ・コントロールピンと呼ばれ、文字どおりバッテリの充電を制御するピンで、コネクタにつけられたLEDの色を変化させるためにも使われます。マグセーフコネクタは一見すると接点が露出して危なく見えますが、これらの接点は「ポゴピン(Pogo Pin)」と呼ばれる形状のコネクタが使われ、普段はコネクタ内部で接点が浮いた状態のため通電していません。コネクタが上から押されたときのみ通電する構造です。

 

交流と直流の関係

発電所で作られた電気は、いったん電力を高圧にして送電ロスを減らしています。この高圧電流は家庭に届くまでに段階的に電圧が下げられますが、変圧を効率的に行えることから交流が採用されています。最終的には家庭用コンセントからは100Vの電圧が得られます。一方で、Macをはじめとする電化製品はシンプルな回路で動作する直流が採用されています。上のグラフのように、交流で一定の周期で電圧と電流(グラフは電圧のみ)が変化しますが、直流では一定のため扱いやすいのです。

【もっと教えて】

歴代のMacの消費電力を比較すると省エネルギー技術の進化がわかります。初期インテル製CPUを搭載したiMac21.5インチモデルは241Wですが、2011年モデルで205W、2015年レティナディスプレイモデルでは119W、標準ディスプレイモデルに至っては58Wにまで省電力化されています。

【もっと教えて】

ライセンスされていないマグセーフコネクタを使用したケーブルなどが販売されていますが、これらは発火や破損の原因になるので注意が必要です。特に車のシガーソケットに接続するものは、不安定な車の電源をそのまま流すものもあり危険です。