私が検証しました!
山本 敦
ITジャーナリスト。海外出張時にヘッドフォンを持参する機会が多かったのですが、最近は代わりにAirPods Proを持ち出しています。十分に静かな環境に浸れるので感謝しています。
[SPEC]
【発売】Apple
【価格】3万9800円
【ドライバ】高偏位Appleドライバ、【対応コーデック】AAC、SBC、【防水防塵】IP54(イヤフォン本体/充電ケース)、【バッテリ駆動時間】最大6時間(イヤフォン本体)、最大30時間(充電ケース併用/再生時間)、【質量】約5.3g(イヤフォン本体片側)、約50.8g(充電ケース)、【URL】https://www.apple.com/jp/airpods-pro/
性能が強化されたのはコネクタだけじゃない
2022年9月、低音を中心にサウンドを強化し、遮音効果も高めた第2世代のエアポッズ・プロ(AirPods Pro)が発売されました。そして2023年9月に登場したのが、このモデルをベースにしながら、ケースのコネクタ形状をライトニング(Lightning)からUSB−Cに変更したモデルです。これに伴いライトニング搭載エアポッズ・プロ(第2世代)の販売は終了しましたが、USB−C搭載エアポッズ・プロ(第2世代)は使い勝手や一部の性能が異なるので、今回はそんな新モデルを詳しくレビューしていきます。
本製品はiPhone 15シリーズと同日に発表され、両者ともにUSB−Cコネクタを搭載することが強調されました。これによりUSB−Cケーブルをほかのデバイスや周辺機器と共有できるようになったほか、iPhone 15シリーズには有線接続したアップルウォッチ(Apple Watch)や本製品を充電できる機能も追加されました。ほかにも、従来の耐汗耐水性能に加えて防塵性能が強化され、IP54に対応したことも発表されています。
さらに本製品には、2024年中に発売開始予定の「アップル・ビジョン・プロ(Apple Vision Pro)(以下、ビジョン・プロ)」と組み合わせることで、ロスレスオーディオを再生できる機能が搭載されました。本製品には、ビジョン・プロと同様にH2チップが搭載され、両デバイスのチップが連動することで最大48kHz/20bitのロスレス再生を実現できるようになったのです。
そもそも、ビジョン・プロには空間オーディオ対応の内蔵スピーカが搭載されているのに、エアポッズ・プロと連係するロスレスオーディオ再生機能がなぜ必要なのか。その用途が気になる人もいるでしょう。筆者が思いつく用途は、高精細なアバターをビジョン・プロの画面に映し出せる「フェイスタイム(FaceTime)通話」です。ビジョン・プロの内蔵スピーカでは得られないパーソナルなリスニング環境を確保しつつ、アバターの口元の動きをスムースに同期するための仕様なのかもしれません。またビジョン・プロは、奥行き感のある3D映像「空間ビデオ」をはじめ、ゲームや映画コンテンツも利用できます。これらをイヤフォンで楽しむ際、音声をピタッと同期させる仕組みを確保したい意図もあるのでしょう。
今後、エアポッズシリーズは順次ロスレス再生に対応すると筆者は予想しています。ゆくゆくはiPhoneやiPad、Macとの組み合わせにも波及して、「アップル・ミュージック(Apple Music)」などのサービスでもロスレス再生も楽しめるようになるかもしれません。
超快適なノイキャンと外部音取り込み
ここからは、USB−C搭載エアポッズ・プロ(第2世代)を試したレビューと、最新OSで追加された機能についてお話ししていきます。
筆者は本製品をさまざまな場所で試しましたが、まず便利だと感じたのは飛行機での利用でした。iPhone 15シリーズとケーブル1本で接続して充電できるため、荷物をなるべく減らしたい空の旅が快適になりました。また、本製品はライトニング搭載エアポッズ・プロ(第2世代)と同様に、飛行機のエンジン音やほかの乗客の話し声などをしっかり消音してくれて、iPhoneにダウンロードした映画コンテンツのサウンドに深く入り込めます。そして、客室乗務員の方と話す際には、周囲の環境音がクリアに聞こえてくる外部音取り込みが真価を発揮しました。
9月中旬にはiOS 17およびiPadOS 17、macOSソノマの配信が開始されており、ライトニングとUSB−C、両モデルのエアポッズ・プロ(第2世代)のファームウェアを更新できます。更新後には、「適応型オーディオ」モードが追加され、「適応型ノイズコントロール」「会話感知」「パーソナライズされた音量」という機能を利用できるようになりました。
「適応型ノイズコントロール」は、ノイズキャンセリングを有効にしながら環境音を聞くための機能です。賑やかなカフェでハンズフリー通話しながら試してみると、周囲の雑音やコーヒーミルのモータ音などをしっかりと消音しながら、通話相手の明瞭な声がイヤフォンから聞こえてきました。子どもの泣き声やアラーム音、人から話しかけられた声のような、イヤフォンを装着した状態でも注意を向けるべき音は独自のアルゴリズムで選り分けて、ノイズキャンセリングをすり抜けながら聞こえてくるのもポイントです。
反対に「会話感知」機能を利用すれば、イヤフォンを装着している自分から相手に話しかけるときだけ、外部音取り込みを自動で有効にしてくれます。ノイズキャンセリングがオンの状態でも、エアポッズ・プロ(第2世代)を装着しているユーザが話し始めたことを検知し、1~2秒前後でオーディオのボリュームを下げて環境音を取り込みます。そして会話が終了すると、数秒後には自動で元の状態に戻るのです。
また、「パーソナライズされた音量」は、周囲の状況と音量設定に応じてサウンドの音量を調整する機能。時間が経つほどリスニングの好みを学習し、周囲の環境に合わせて微調整してくれるようになります。
イヤフォンでサウンドを聞きながらも、なんの再生操作もせずに自然に会話したり、周囲の音にも注意を向けたい。そんなユーザは本製品が選択肢に入ってくるでしょう。これまでのエアポッズシリーズに比べて音質も改良されているので、店舗で試してみるのがおすすめです。
【POINT】約10分で10%充電できた!
iPhone 15 Pro Maxから本製品を充電してみました。ケースのバッテリ残量50%の状態で充電を始めると、約10分で10%をチャージ。約50分間の充電で、バッテリ残量が95%になりました。
【POINT】外部音取り込みをもっと便利にする適応型オーディオ
iOS 17/iPadOS 17/macOS Sonomaでは、「適応型オーディオ」機能が新たに追加。AirPodsのモード切替画面では、従来の[オフ][外部音取り込み][ノイズキャンセリング]に加えて[適応型]が選べるようになりました。ここで[適応型]を長押しすることで、[ノイズコントロール適応型][会話感知]のオン/オフを切り替えることが可能です。
【POINT】「設定」アプリで機能切替
「設定」アプリを開いて接続しているAirPodsの名称を選ぶと、[オーディオ]欄で[パーソナライズされた音量][会話感知]のオン/オフを切り替えできる機能なども追加されています。
【POINT】飛行機でしっかり消音できた!
飛行機で本製品の性能を検証。Lightning搭載AirPods Pro(第2世代)で強化されたノイズキャンセリング機能は健在で、飛行機のエンジン音や周囲の人の声をしっかりと消してくれました。
検証報告
□Lightning搭載AirPods Pro(第2世代)とケースのデザインや寸法は同じ。音質やノイキャンの実力もほぼ同様に感じました。
□iOS 17で新たな機能を利用できるようになりました。周囲の音を聞くためにイヤフォンを耳から外したり、再生操作をしたりといった手間を減らせます。
製品貸与●Apple