このコラムでは筆者が所有していた愛機を中心に、1990年から2010年頃のビンテージMacをご紹介しようと思う。その時代にMacを使っていた人も、そうでない人も、Macの歩んできた歴史の記録として楽しんでいただければ幸いだ。
第1回目はAppleで最初のカラーディスプレイを搭載した一体型Macであり、また筆者がライターの世界に足を踏み入れるきっかけとなった「Color Classic」についてご紹介しよう。
Color Classicの誕生
Color Classicが発表されたのは1993年2月。それ以前のMacのラインアップを見てみると、初代Macitoshから続く9インチモノクロCRT(ブラウン管)を搭載した一体型モデルとして、Macintosh SEとSE/30が存在していた。
またカラーディスプレイと組み合わせて使うMacintosh IIシリーズはIIxからIIfxへと進化を重ねつつ、よりコンパクトなIIcx、IIciと分化していた。
1990年後半に入るとAppleはそれまでの高付加価値戦略から、低価格モデルへの展開によるシェア拡大へと製品戦略を大きく変化させた。
その結果、SEの血を引く低価格モデルClassic、IIciのコストダウン版であるIIsi、そしてビザボックス型のLCの3モデルが加わり、日本(幕張メッセ)で初めて開催されたMacWorld Expoでも盛大にお披露目された。
1991年には当時最速のプロセッサと賞賛されたMotorola 68040を搭載したQuadra 700と同900をリリース。翌1992年にはエントリーモデルの性能を向上させた、Classic IIやLC IIがリリースされた。
この時代、Macintosh IIから続くQuadraシリーズや新たに登場したLCシリーズは、搭載するプロセッサの進化に合わせて進む方向がある程度見通せたが、予測が難しかったのが初代Macintoshから続くClassicの方向性だった。
このシリーズはMacの象徴的な存在でありながらも、同時にコストパフォーマンスに優れたエントリーモデルとしての位置づけが強かったからだ。当時も多くのユーザからカラー化が熱望されてはいたものの、コスト面を考えるとその実現が容易でないことは想像できた。
このような背景の中で登場したColor Classicは、当時最新のSONY製10インチファインピッチトリニトロン管を採用したカラーディスプレイを採用。LC IIと類似したアーキテクチャを備えるローコスト設計のロジックボードを搭載していた。
カラーディスプレイの表示解像度は512×384ピクセルで、モノクロディスプレイを採用するClassicシリーズより高さ方向に42ピクセル大きく、アスペクト比(画面の縦横比)が3:2から4:3に変更されている。
またApple II用のソフトを走らせるための「Apple IIe Card」をサポートするため、560×384ピクセルの表示モードも備えている。
これはApple IIのハイレゾグラフィックモード「280×192ピクセル」およびApple IIeのダブルハイレゾグラフィックモード「560×192ピクセル」をスケーリング(解像度変換)なしで表示できるようにするための機能だった。
筐体はそれまでのClassicのデザインをベースにしつつ、多くの曲面で構成された造形と丸みを帯びた「脚」を備え、同時にリリースされたQuadra 800やCentris 610と同じく「エスプレッソ」と呼ばれるデザイン言語を用いた新デザインとなった。
未来はみんなにやってくる。
1993年2月にColor Classicと同時にリリースされたデスクトップ型Macは、LC III、Centris 610、Centris 650、Quadra 800の計5モデルで、従来モデルの多くも併売された。この時リリースされた総合カタログのキャッチは「未来はみんなにやってくる」。
Macのラインアップが充実しはじめ、ソフトウェア環境を見ても待望の日本語版 System 7である「漢字Talk 7.1」や、当時としては画期的な存在だったマルチメディア技術「QuickTime」がリリースされるなど、活況を帯びていた。
確かにこのとき、誰の目にもMacとAppleは順風満帆に見えた頃だったと言えるだろう。
次回はColor Classicのアーキテクチャと、Color Classic IIへの進化についてご紹介しよう。